kurakenyaのつれづれ日記

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『反教育論』カプランの教育過剰論

こんにちは。

 

Twitterでポリティカルなことつぶやいているので、ここでは割りと静かなアカデミックなことを書いてみよう。昨日今日と、カプランの「反教育」という本を読んだ。

 

大学なんか行っても意味はない?――教育反対の経済学

 

カプランはリバタリアンでもあるが、その主張はこの本とは直接の関係がない。ただ単に、経済学的な分析をすると、

 

  • 教育の効果としては、人的資本は2割、シグナリングが8割と推定している、
  • 教育のシグナリングは、知能だけではなく、真面目さ+協調性である、
  • アメリカを含む先進国の高校、大学の教育システムは、個人としては意味があるが、社会的には過剰になっている、
  • 教育予算を減らすのが、全体として望ましい、

 

というような主張だ。

 

こうした教育の過剰供給については、実は長い間、確信していたが、こうして1冊の書籍として主張されたのは初めてだ。とくに、労働経済学者たちが、教育の効果として100%の人的資本の蓄積、つまり単純に個人の生産性の向上を前提として来きたことから、結論が大きく違うものになっている。

 

ボクとしては、カプランの『選挙の経済学』に続いて、これも納得できる。おそらくは8割が単なるシグナリングであるというのも納得できるし、それにともなって教育が過剰になっているのも同意できる。

 

ほとんどの人は、この結論に懐疑的だろうとカプラン自身も言っているし、それは正しいだろう。豊かな社会というのは、その副産物として有権者の好みを過剰に実現するのだろう。それが日本では、高齢者福祉であり、アメリカでも教育予算の過剰というなのだ。

 

最後に、この本の内容は良いが、400ページを超える長さは??だ。冗長な記述が多く、報告内容も学会的に多いので、もっと短く280ページほどでまとめてほしかった、読むのに2日もかかってしまったよ。

 

しかし、先進国の教育の過剰については、もっともマトモな本。読む価値はありますよ。