山本勝市という人
こんにちは。
友人の勧めで、山本勝市の『福祉国家亡国論』を読んでみた。
この人はもともと戦前は自由主義経済学者という感じで研究していたが、戦後には衆議院銀にもなり、自由党の結成にも参画した人物だ。これまでのボクの読書においては、特に彼を引用している学者の本を読んだことがなかったので、学者というよりもむしろ自由主義的な政治家なんだろうという認識だった。
内容の基礎は、完全にミーゼスによる計画経済の計算不可能性、ハイエクによる情報の偏在理論、といったオーストリア経済学。それを、昭和49年=1977年当時の政治状況にあてはめて、共産党や社会等だけではなく、自由党が民主党と合体してできた自民党の福祉政策などに対しても、かなり辛辣な批判を展開している。
興味深かったのは、「再分配政策は、為政者の恣意的な配分がなされるだけで、市場で獲得される賃金よりもかえって不正である」という主張。(多分、当時に比べると現代社会のほうが、ジェフ・ベゾスやイーロン・マスク、ビル・ゲイツなどの大富豪が目立っている分だけ、もっと「不平等感」は高まっているんじゃないだろうか。)
社会正義というのは客観的な実在ではなくて、我々の主観にすぎない。だから「市場の資源配分が公正である」とは言えないだろうが、それでも、他の恣意的な再配分よりはマシだろう。ちょうど民主主義は悪いかもしれないが、他のものよりもマシというのと同じ。
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さて、この著作では当時の自民党の綱領や、あるいは昭和時代に有力であった、例えば宮沢喜一元首相の論説などをとりあげて、その論理的な矛盾などを指摘している。こうした批判は、ある意味で興味深いとも言えるが、多分ボクを含めてほとんどの学者にとっては、それほど追求したいような活動ではないだろう。政党というのは選挙民に支持されなければ意味がないわけで、選挙民は論理的な一貫性や真理性を求めているのではない。単に自分に都合が良い状態を求めているだけだ。そういう理由から、経済学者から見た本書の価値は、理論の展開や日本経済への当てはめというよりは、当時の政治的な風潮への反論を通して、時代背景を知れるということにあるだろう。
福祉国家への道をどんどんと進んでいった当時、こうした再分配政策反対、年金反対などの意見を展開しているというのは、大変に興味深い。もちろん、どの政治家、政党もすべて福祉政策を打ち出して、票を獲得しようとしていたのだから、こうした声はかき消され、反福祉政策の議員がまったくいなくなったのは当然か。
日本が福祉政策へと邁進した50年前。その結果と、想像もできなかったような人口減少が相まって、現在やこれからの日本経済がある。ウーン、これは難しいものだ。
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