こんにちは。
けっこう久しぶりになってしまいました、すいません。
動物の行動を説明するときに、直近の行動を引き起こした神経回路について説明するのは当然のことなんだが、それは時間的にかなり接近した数秒という程度の過去について話している。
ホルモンはもっと長い時間をかけて、神経系を含む身体全体を調整する。例えば、胎児の発生過程からテストステロンは男の脳や性器を作るわけだ。あるいはセロトニン系の神経症やうつなんかも発生、成長時から、この数ヶ月というところまで、けっこうな時間で神経系その他を変化させる。
で、そうした神経系を設計し、ホルモン調整を機能させる遺伝子を揃えてきたのは、生物種の進化的な過去なので、何十億年というスパンで考える必要がある。
というように、本書前半の人間行動の記述は続く。よく知られているものもあれば、マイナーな知識・論争のある知識もあって楽しいが、まとまっているという感じがない。ということで、こりゃ著者本人の博識はわかるが、研究者はともかく、普通の人は延々とつづく内容の羅列に飽きるよ。。。なんか消化不良になる、、、
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中の話題の一つに、よく知られたオキシトシンの話がある。親子の愛情と絆を生み出すオキシトシンだが、いろんなゲーム(公共財ゲームとかね)の被験者にスプレーすると、内集団には利他的になるが、外集団には排外的になることが報告されている。(これは僕はちょっと再現性そのものを疑っているのだが、)論理的には、特定の個人を贔屓するような神経回路は、別の人々を差別することに使えばもっと効果的に機能するだろうと考えれば、進化がオキシトシンにそうした二重の神経作用を与えることはおかしなことではない。
有名なスウェーデンからの論文に、オキシトシン濃度が高い男性は離婚しない傾向があるというのがある。なぜって、Prairie Vole (ハタネズミ)のオキシトシン・レセプターの違いが、つがい形成を決定している。それを人間に応用したら、見事に同じ結果が出たという話。おそらくもっとも有名な行動遺伝子の一つだが、、、
時間的に短い順に、神経系、それをつくるホルモン系、それを作る遺伝子型というような説明をしているのは楽しいが、全体の話が、生物の行動についての総花的な説明になってしまっている。
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結局、著者が措定している、「ヒトが戦争をやめられるのか?」という疑問は、人が好戦的なチンプなのか、それとも平和的なボノボなのかということになる。はっきりとした結論は提示されていなくて、それらは状況によって変化し得るというような感じなんだが、こうした曖昧な結論は当然過ぎて、普通の人には興味深いものではないんじゃないか??
内容は楽しい知見に満ち溢れて入るものの、特段のメッセージや仮説がないことに加えて、この本はやたらと値段が高いので、研究者以外にはオススメできないかも。
それではまた次の本に移りたいと思います。