- 作者: ダロンアセモグル,ジェイムズ A ロビンソン,稲葉振一郎(解説),鬼澤忍
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2013/06/21
- メディア: 単行本
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今日 アセモグルの本が翻訳されていたことを見つけたので、むしろこっちについて書くことにした。アセモグルはMITの経済学教授で、発展経済学では間違いなく最も著名な学者だ。
ある国家が、なぜ豊かで、平和で、暮らしやすく、別の国はそうではないのか? という古典的な問に対して、「それは制度の違いだ」という本書の結論は、理解もしやすく、スバラシイものに思われる。
例えば、北朝鮮と韓国は全く同じ国民が、制度の違いによって、最貧国と先進国の違いにつながっているのだ。このことからは、制度が重要であることは、古典的な自由主義が発展につながることを意味しており、ボクも完全に納得している。
しかし、本当にそれだけか?
ボクの目から見ると、何が経済発展、経済成長の原動力なのか?については、Lynn & Vanhanenの方が、圧倒的に正しいことを指摘している。つまり、大きな目で見ると、「制度」それ自体が内生変数なのであり、それは知能の関数なのだ。集団の平均知能が高いほど、民主主義を採用し、汚職は少なく、経済は繁栄して、神は否定されている。
でも、知能もまた内生変数なんじゃないの? 金持ちは、教育に多くを投資できるから、余計に知能が上がって金持ちになるんじゃないの? というマトモな意見がある。
しかし、この答えは、ほとんどの常識的な家庭環境では、見るべき知能の差は発生しない、というものだ。双子研究、さらにtrans racial adoption study を見るなら、家庭環境が知能に与える影響は、ほとんど全くない。もっと正確に言うと、思春期までは親の与える影響はあるが、思春期以降は全く消えてなくなってしまうのだ。気が向いた人は、この点を以下の本でよく読んでみて下さい。
- 作者: Robert Plomin,John C. Defries,Valerie S. Knopik,Jenae M. Neiderhiser
- 出版社/メーカー: Worth Pub
- 発売日: 2012/09/24
- メディア: ハードカバー
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興味深い例としては、アラブ首長国連邦がある。彼らは過去40年間、西洋人を超えて豊かであり続けているが、科学も技術も何一つ有意義なものを生み出していない。PISAなどの国際学力テストなどを見ても、西洋諸国よりも平均が1SD以上も低いままなのだ。そしてもまた、こうしたテストの結果は総じてオマーンなど近隣の費産油国の平均と全く同じなのだ。カネでは、知能を高めることはできない。
というわけで、John Clark Bates medalをとったアセモグルは、おそらくノーベル賞もとるのだろう。しかし開発経済学の分野はもはや、生物学・心理学と整合していない。より整合的、科学的な社会科学は、もちろんポリティカルな理由から永遠に閉ざされ続けるに違いない。 合掌
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