確か数年ほど前に、「実業家の中で、複数回の異なった成功をおさめたものはいない」というようなことを書いたと思う。それは、確か(左翼的な)レスター・サローが、カーネギーやロックフェラーなどの大富豪への課税を正当化する際に指摘していたことを、僕が納得して覚えていたものだ。
サローによれば、「偉大な実業家などと呼ばれる人たちは、実力というよりも偶然に成功を収めているのであって、それが証拠に、成功した事業とは異なったことで成功しているひとはいない」という。だから、「偶然や運によって得た財には、高い累進税を課してもかまわない」というのだ。
さて、僕もあまり複数回の(質の異なる)成功をしている実業家ってのはいないな、などとかんじていた。ところが、先日マックのOS X Lion を見て、まさにジョブスという人は、コンピュータ産業を代表するLegendだと痛感した。
昔、マックのOS5ぐらいから僕はマックを使っていたが、そのUIは今のマック、あるいはそれをパクったウインドウズと同じで、DOSのコマンドからみると革新は明らかだった。
再びアップルに帰ってきたジョブスは、iPod, iPod Touch, iPhone, iPad とUIにTouchを取り入れて、革命を起こした。それがついにパソコンの操作にも及んできて、swipeの導入やスクロールバーの排除など主流のUIは変化した。このやり方が標準化することは間違いない。
凡庸な僕は、20年以上前からMacのUIでそれほど改良するべきことがあるようには思ったことがなかった。完璧じゃん、最終型だとしか考えられない、と思っていた!!
じっさい、マイクロソフトも完全なパクリのままで20年を走ってきた。今Windows8であるいはどれだけか変化するかもしれないが、、、、
ともかく、ジョブスという人は本当にすごい想像力の人だ。またしても感服した。コンピュータ産業生成期の歴史的レジェンドを一人上げるなら、ゲイツではなくて間違いなくジョブスだろう。
ちょうどフォードT型をつくったヘンリー・フォード=ジョブスと、単にクルマに車格を導入してマーケッティングに成功したアルフレッド・スローン=ゲイツの歴史における重要度、あるいは知名度の違いが、10年もすればあまりに明らかになるだろう。
さて、一応経済学に戻って、ジョブスという人は本当の起業家で、何度の消費者のその時代時代の欲求を超えて、人々のライフスタイルの先導を行って来た。こういう人がアントレプレナーと呼ぶにふさわしいのだろう。闘病生活が終わる前に、さらなる革新をぜひとも見せてもらいたい。