こんにちは。
ミクロ経済学を勉強すると、人間はリスク回避が普通だということがわかる。だって、50%ずつで0円、100万円のくじよりも、かならず50万円のあたるくじを選ぶのだ。とすると、期待効用関数は凸型のはずで、つまりはリスク回避というわけ。
ここからは、実はかなりいろんな発想が出てきている。例えば、ロールズの「無知のヴェール」によると、「人間が、どのような立場になるか知らないままに、生まれるとしよう。この場合、人はリスク回避型だから、できるだけ格差の少ない社会を選ぶはずだ」などなど。
- 作者: ジョン・ロールズ,川本 隆史,福間 聡,神島 裕子
- 出版社/メーカー: 紀伊國屋書店
- 発売日: 2010/11/18
- メディア: 単行本
- 購入: 10人 クリック: 264回
- この商品を含むブログ (82件) を見る
ところが、行動経済学を勉強してみると、実際の人間は、「自分だけは特別バイアス」を持っていることがわかる。例えば「自分だけが宝くじに当たるのではないか」みたいな考えだ。誰でも中二病にかかって、「自分が特別な能力を持つヒーローだったら??」みたいなことを夢想するものだ。
ボクの時代は、ガンダムだったので、例えば「自分がアムロみたいな選ばれしニュータイプなら」、みたいな感じの空想になる。これが、そのまま戦争に行けば、たいへんにリスク嗜好の個人だということになるだろう。
もっと実際的な例で行くと、コロンブスはたまたま生きてアメリカを発見できたが、それ以前のほとんどの新大陸発見の船乗りは死んでいる。同じようにマゼランは5隻の船に270人が乗り込んでリスボンを出発したが、最期は1隻18人しか帰ってきていない!! 海賊王になるのは、とんでもなくタイヘンなことだったのだ。
チンギス・ハンだって、織田信長だって、恐ろしくリスク嗜好としか言いようのない人生を送っている。ある種の男は、成功した場合のリターンが桁違いであれば、どんな戦闘にも向かっていくものなのだろう。
もっと近いところでは、ビル・ゲイツがハーバードを中退したとき、イーロン・マスクがスタンフォードを辞めたとき、ジェフ・ベゾスが高給を投げ売ってアマゾンを起業したとき、(常識的には)そんなに大きなリターンの見込みはなかったんじゃないのか??
結局、金銭的な評価ができるような場合にはリスク回避がデフォールトだが、不確実性のような、本質的に計量できないような場合には、かなりリスクを許容して生きるというのが人間(特に男)の人生なのだ。
さて、ここで問題。果たして人間はリスク回避型の効用関数を持っていると言えるのか??
ミクロ経済学の記述とは裏腹に、よくよく考えれば、ロールズ流の無知のヴェールは、まったく説得力をもたない。それは、(ボクのように)実践をしない高踏的な学者の思弁に過ぎないのだろう。
_