kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

早期の介入教育の効果は?

James Heckman は有名な計量経済学者で、ノーベル賞も受けている。この人はシカゴ大学にいるのだが、割と最近に、60年代に、貧困地区の未就学児童を対象にして、その環境を改善した結果を40歳になるまで追跡したというPerry preschool program のcost/benefit analysisを行っている。

http://jenni.uchicago.edu/papers/cba_paper_2009-04-17_jlt.pdf

これを読むと、そういった早期介入による社会便益は7−10%程度のリターンがあると推計されている。介入された児童が大人になると、修学年数が長く、就業率や平均年収が高く、犯罪率は低く、薬物の濫用は少ない、というのだ。

正直に言って、僕はこの結果に驚いたし、むしろそれほどの効果があるのなら、確かにもっと大規模な追試をする価値があるのではないかと感じている。


通常、家庭内の環境は、子供の行動にほとんど影響を与えないことがわかっている。これはたしかに驚きの事実だが、行動遺伝学の教科書には、必ず念入りに書いてある。例えば、Robert Plomin et al. による教科書をご参照ください。

http://www.amazon.com/Behavioral-Genetics-Robert-Plomin/dp/1429205776/ref=sr_1_1?s=books&ie=UTF8&qid=1290435352&sr=1-1


もし、養子などの家庭環境では効果がないが、早期介入教育がそれほど大きな効果を人生に与えるとしよう。それは家庭環境という24時間の環境よりも、わずか数時間の特殊な教育により大きな価値があることになる。これは矛盾しているのではないのだろうか?

僕はこの結論をやや不思議だと感じているので、ぜひとももっと厳密で大規模な追試をやってもらいたいものだ。

それと、ミネソタアリゾナなどで養子研究があるが、いい環境に養子に行った子どもたちは、同じように就業率の上昇や、犯罪率の低下につながっているのだろうか?これまでの研究は心理学者がしてきたためか、人格やIQ、精神病などについての報告ばかりで、その他の社会的な成功について報告されていない。

本当にHeckmanがいうほどの価値が幼少時の環境にあるのなら、少なくとも公共投資なんかよりははるかに価値が高いように思うのだが、、、、