kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

人格教育は実在していた!


教育については,人種問題が大きなアメリカでは,これまで多くの政策が実施されてきた.結果としては,知的な能力にはほとんど影響を与えないということがわかっている.


ここまでわかったことで,教育や育児への早期介入は,そもそも まったく効果が無いのではないか? と僕は考えていたが,唯一の例外はHeckman によるリスク家庭の幼児への早期介入の報告だった.「早期介入は認知能力を改善することはないが,忍耐や対人関係,その他の人格教育の効果があって,それは就業率,犯罪,離婚,家の所持などに良い影響をもたらす」というものだ.


ホントかいな? と思っていたが,彼の連作,論文を読んでいるうちに,確かに本当だということに納得した.対人関係を含む教育というのは,確かに存在していて,それは少なくとも現代社会の要求するような人格の涵養も含まれているのだ.


Heckman たちによると,アメリカでは19世紀にホーラス・マンなどによって普通教育の中でも人格教育が強調されたが,最近はこうした要素は否定されてしまい,認知能力だけが強調されるようになってしまった.高校卒業資格(GED)だけをとっても,それはほとんどの場合(除く若い母親)高校卒業と同じようには機能していないのである.



うーん,つまりは学校で「意味のない」ことを覚えたり,嫌なことをしたりすることで,社会性や自制心,我慢強さ,目標設定能力,人間関係の作り方などを学ぶということなのだろう.確かに,社会の仕事のほとんどは,そもそも面白いものではないだろうから,それをやり続けるというのは小学校以来の我慢や努力が内在化してこそ可能なのかもしれない.

そうすると,一見して無意味な大学教育ということにさえも,ホワイトカラーの書類業務の作成の予行演習としての意味があるのかもしれない.



Giving Kids a Fair Chance (Boston Review Books)

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