kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

 「共感の時代へ」読んでみた

去年、ロサンゼルスのBarn's and Noble によくいったのけれど、
この本 "The Age of Empathy" by Frans de Waal が大量に平積みされていた。
僕は興味は持ったものの、別の本を読んでいるうちに帰国してしまった。


で、この前翻訳を見つけたので、読んで見た。
ドゥ・ヴァールはすごく詳細な観察をするし、博学だといつも思うのだが、
あまり理論的というわけではないところがちょっと残念というべきか。
以下アマゾン向けに書いた感想をコピーします。

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ドゥ・ヴァールは「チンパンジーポリティクス」という本で、
チンプも人とほとんど同じように同盟、裏切りなどの多様な政治活動をすることを
世界に広く知らしめた霊長類学者です。


今回の著作はなんでも10年かけて書いたということですが、内容としては、
チンパンジーも他者の感情に共感し、慰め行動をとること、
ゾウ、イルカなども共感をもって他者に接する、
アカゲザルなどでも妬み行動もあれば、
同時に公平な取り扱いを受ける選択行動をする、
など、人間で社会的に、あるいは実験的にすでに観察されてきた社会行動と
基本的に同じであるという膨大な研究を概説しています。



そして、エンロンのように弱肉強食の20世紀型の資本主義に変わって、
これらの21世紀はもっと共感を重視する時代になるべきだ、なるだろう、
と結論しています。



僕はドゥ・ヴァールの動物行動の知識は尊敬しますが、
人間社会についての考察は、あまり評価しません。
社会的に共感がもっと重要だという指摘は同意できるのですが、
それは自発的な組織が活性化するべきだということは意味しますが、
政府が福祉を充実させるということとは直結しないと思うからです。


しかし、本書の価値は、人間の親社会行動と同じものが、
あるいはその原型がすでに哺乳類に広く見られるという事実の提示にあります。
その意味で、既存の研究を知ることは大変に有益であることは間違いありません。