言わずとしれた「動物の権利」の泰斗ピーター・シンガーの代表作です。1976年の著作であるにもかかわらず、今読んでもまったく色あせない真摯な哲学的な探求を含んでいます。
シンガーは、道徳理論は人間だけがその義務の主体である反面、動物の固有の生活様式への権利は感覚をもった生物には適応されるべきだとします。この意見が どの程度説得的に響くかは人それぞれだと思いますが、少なくとも僕は、「我々が共感を持つ程度に応じて動物の自然に生きる権利を認めるべきだ」とする道徳理論には説得力があるように思われます。
おそらく僕のようなイヌネコ好きが牛なら食べてもかわいそうではないというのは、なにか首尾一貫していないように思いますし、まあ 単純な博愛精神の延長ぐらいでいいのかと思います。
シンガーはオックスフォード大学で解析哲学者のヘアについて学んだということらしいですが、それらしい(理解可能な)哲学的な分析・表現のスタイルには好感を持ちました。
実際に乳製品も卵も摂取しないveganというのは僕の生活環境からすると、維持するのが難しそうです。乳製品を食べるluctoや卵を食べるoboなら家族との融和も成立するものかと思います(苦笑)。まあ とりあえずは一人で食べるときは食肉しないことにしようと思います。
余談になりますが、日本でベジタリアンをやるというのは なんか新興宗教に近い覚悟がなくてはならないような感じなのがちょっと気負いします。僕が10年前にサン・ディエゴにいたときはまわりに多くのベジタリアンがいて、いろいろとレストランにも行きました。総じておいしかったとは思いませんでしたが、そのような文化的な多様性にはimpressされました。
日本でも ぜひともベジタリアン運動が盛んになってほしいと思います。