kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

『ドキュメント屠場』

 岩波書店から出ている反骨ルポライター鎌田慧の著作です。
 僕はベジタリアニズムに興味があって、屠場の非人道性みたいなものを期待しながら本を開いたのです。が、そこにあったのは被差別民としての食肉加工業従事者の生き生きとした仕事っぷりと人生でした。

 リバタリアンの僕は、徳川家康が恣意的に定めた身分秩序にも興味はないし、現在の同和問題朝鮮人の人権問題にもほとんどまったく関心がないので、この著作の意図にも関わらず、単にある種の職場で快活に働いている人々のルポという以上のものではありませんでした。

 職業に貴賤なし、であります。高度に分業化された社会はどの職業にも必然性があり、それなりの倫理的な基盤をもっていることがほとんどです。戦争中は人が人を殺すのは当たり前で、その罪悪感などなくなってしまうと言われますが、そうだとするなら、牛や豚の屠殺解体などは別に何のこともない日常の職業生活になるのだということなのでしょう。

 まあ、当たり前のことなのでしょう。家康によってエタヒニンとされた人々をいう特殊な社会的な文脈で見るのであれば、価値があるのかもしれませんが、あまり未来には向かっていないように感じますね。むしろ いろんな職場の人たちが生き生きと働いているというルポだと読めば楽しいものでしょう。