kurakenyaのつれづれ日記

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暴力と不平等の歴史

こんにちは。

 

今『暴力と不平等』を読んでいる。前から知っていたが、読んでなかったので、年末年始することもないので、呼んで見ることにした。さてこの本、600ページもあるだけじゃなくて、ひじょうに言葉遣いが分かりにくいので、読むのにとても時間がかかる。

 

 

とりあえず、2章まで読んだので、そこまでをまとめると。

 

人間社会の不平等を減らした事例として、20世紀の二度の世界大戦のような総力戦がある。生産手段がすべて破壊されるので、資本からのリターンがほとんどゼロになるため、もっとも豊かな人びとが貧しくなって、それによって平等が実現するのだ。それ以外の安定した時期においては、どうしても貧富の格差が開いてしまうというもの。古代ローマしかり、近代以降のヨーロッパしかり。

 

3章以降は、社会主義、疫病、と続くらしいので、正月の楽しみにとっておこう。

 

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さて、しかし、これはパッとしない話だ。平等な社会を実現するには、私的な生産手段を破壊するしかないということだ。

 

また、この点で、著者シャイデルは「不平等の減少」(ジニ係数の低下)という言葉を普通に良い意味合いで使っているようだが、ボクの認識では、それはほとんど間違った使い方に近い。だって、20世紀の世界戦争では一番豊かな人が貧しくなるだけじゃなくて、全員がとんでもなく貧しくなって、かつ数千万人が餓え、疫病、直接の戦死などで、苦しんだからだ。これが平等の実現なら、そんなものは必要ない。

 

そういう「下方向への平等」はたしかに総力戦争で歴史的に実現したのだろうし、これからも実現することはあるだろう。しかし、それは本末が転倒した発想だ。そんな「平等」なら、不平等のままでいい。

 

実際のところ、人間の知性、努力、真面目さなどの性格、時間選好、リスクの取り方など、すべての資質は、世代を超えて受け継がれる。それがわずかな差でしかなくても、100年の間には大きな資産や収入の格差になってしまうということなのだ。

 

どの世界を見ても2-300年のうちに土地が富裕層に集中してしまうのは、1.富裕層は自分の生活費を越えるリソースをもっているので、常に未来に投資ができる、2.時折来る飢饉や地震などの天災にも備えられる、3.時間選好の高い一般人に金を貸して、その財産(主に土地)などを手に入れて小作人にする、というような普遍的なメカニズムが働くからだ。

 

こうした人間の本質的な問題を置き去りにして、たんなる破壊の平等を目指すというのは、あんまり面白い話ではない。

 

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