こんにちは。
今日はYoutuberでもある成田悠輔さんの『22世紀の民主主義』をざっと読んでみた。口述をライターさんが書き起こしたのか、ウルトラ読みやすい。
- 21世紀に入って、民主主義国家は権威主義国家よりも経済成長しておらず、世論も分断されている
- これに対しては、若者の投票を高齢者よりも重み付けしたり、あるいは論点ごとに各投票者の持ち分の配分を自由に重み付けしたり(quadratic voting)などが考えられる
- 22世紀の民主主義は「社会に配置された無数のセンサーによって自動的に各人の思いが情報として集められて、それをAI的に政策へと評価・変換して実行する」という、アルゴリズム的なものが考えられる
という感じ。4のアイデアについて成田さんは、「AIプログラム自体は公開されるので問題はない」という。それはさておき、「社会のあちこちに配置された画像・音声センサーによって人びとの会話情報を集め、もちろん個人のツイートや書き込みを集める」とかいうのは、検閲国家の中国を念頭においているのが怖い。
確かに、投票という情報は小さすぎる。しかし、無数にある政策への評価という個人の内面に関して、政府機構が勝手にいろいろな情報を集めることを人々は望むのだろうか?
そうかもしれないし、そうではないかもしれない。ボクは「1984」的で、実にイヤな感じがするが、、、おそらく成田さんは政府というものをボクよりも信頼しているのだろう、スノーデンの話がまったく出てこないことへの違和感が残る。
この本は、知っておけば良いと思われるいろいろなアイデアについて話している。これだけでも、読むに値する。だけど、彼の考えるAIプログラムによる政策決定というのは、政治家と官僚の既得権益を完全に剥奪するものであり、誰も納得しないようにも思われる。
(もちろん、これは中世の人間には、現代の民主主義が予想できなかったのと同じかもしれない。そういうスパンでの政治システムの変化について考えていることは明らかなので、これについては無政府社会の到来と同じ程度に留保したい。あるいは、まじめにこのことを論じるとキリがないので、触れなかったのかもしれないし、それはわからない。)
こうした真面目な検討はさておき、とにかく軽く読める。政治家個人に対する床屋談義的な興味ではなくて、もっと抽象的な意味での政治とその正当性理論などに興味のある人にとっては、読んでみる価値はあると思う。
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