日本の都市のなにが問題か (世界のなかの日本経済:不確実性を超えて)
- 作者: 山崎福寿
- 出版社/メーカー: エヌティティ出版
- 発売日: 2014/09/24
- メディア: 単行本
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皆さん こんにちは。
もう2週間が経ってしまいましたが、ボクはまたしても実家に帰って雪見しながら、ダラダラと生きています。さて大阪なおみが勝ったのは良いのですが、NHKさん、錦織は故障してもナダルとジョコビッチも中継して下さい!!
さて、けっこう4章はボクの今いる実家と重大に関係する話ですね。
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4章 中古住宅はなぜ売れないのか
お次は、日本の中古住宅市場がなぜ存在しない、あるいはあまり人気がないのか? という問題。
この問題については、経済学者の常識では、アカロフのレモン=情報の非対称性の問題があったためだといいます。
つまり中古住宅の質を公的に補償する機関がなかったために、購入者は悪い中古住宅をつかまされる可能性を恐れて高い金を支払わない。また良い中古住宅の所有者は、安く買い叩かれるので売りに出さない。その結果、実際に中古住宅の市場が発達しなかったというもの。アカロフのいう情報の非対称性による、市場の消滅というシナリオだというのです。
でも、これって本当かいな?? 僕には、本当は半分しか納得できません。審査・査定専門の建築士を雇うことは昔から可能であったはずではないのか?? レモンをつかまされる恐れがあるなら、専門家の仲買人に仲介してもらうことで、そうした情報リスクは激減するはずです。実際、築地市場って、銀座の寿司シェフたちもが信頼する仲買人がたくさんいて、そういうことで発達したのです。
それで、ボク的には、山崎さんも指摘しているその他の理由、つまり
1.日本の住宅は、そもそもまったく規格化されていない、
日本では住宅が規格化されておらず、持ち主の家族特殊的な間取りで設計されてきています。実際、相続までのつなぎという感じで、2、30年しか持たないことを前提とした住宅が建てられてきました。実際、日本では注文住宅と建売住宅の比率が7・3で、アメリカでは反対の3・7です。狭小土地と家族構成に合わせておかしな家を建てるから、ますます 売れないということになったのでしょう。
実際に、アメリカ・イギリスの1世帯あたりの平均的な住宅融資額は年間300万円ですが、これは日本の43万円の7倍にもなります。また残高は日本の500万の2倍の1000万円なのです。ここで、どうしてアメリカのほうが住宅融資残高が大きいのかといえば、住宅は長期間利用できると考えれているため、より高価なものを建てることが、誰にとっても割に合うのです。それは当然 所有者も銀行もそう考えています(ノンリコースローンであることもあります。) 銀行も建築物がボロければ、売れなくなって困るので、きっちりと設計や建築を監督するインセンティブが生まれるわけです。同じような話になりますが、間取りも規格化されているので、中古で売りに出したときの価値も高く維持できます。
ボクは、どうも こっちのほうが説得力があるように感じます。
2.1つあまり経済学者は指摘しないようですが、僕が感じる大きな理由は、日本の建築の常識的な規格の変化が大きいことです。この規格という言葉は、多様なものを含んでいます。まず例えば、日本の戦後の建築は貧しい時代からスタートしているために、素材がすでに歪んでいたり、気密性がとんでもなく低かったりです。また昔の日本家屋は180センチが基準だったので、次第に天井やドアを高くして、断熱性を高める必要が生じてしまいます。
実際、江戸時代の日本人男性は155センチしかなくて、今よりも17センチも低いのです。その次代に180センチのふすまで快適だったことはわかりますが、当然ながら、それは現代人にとって快適であることを意味しません。つまり昔の建物の価値は、現代人にとって、とんでもなく低いということ。
僕の実家は富山にありますが、42年前の建築なので、寒いし暑いし、戸は180センチでぶつかりそうで、とんでもなく動きにくいです。窓にはすべてアルミサッシを入れているなんてのも、何の勘違いだったのでしょうか、(おそらく単に金属が新しく見えたというほどのことだろうが)、アルミの熱伝導率の高さから考えるとありえない話です。ヨーロッパでは、窓枠は必ず熱伝導性の低い木材か樹脂で作られています。
もしボクの実家のような典型的な日本家屋に長期的にエコロジカルに住むのなら、断熱材を入れて、内部をリフォームする必要があります。それだけでなく、地面もコンクリートベタ打ちではありません。これら全体の改装費用を考えるなら、残念ながらビフォア・アフターよりも、建て替えたほうが安上がるのです。結局、過去40年間を見ると、昔からの日本の家屋の住みにくさのために、中古住宅に大きな価値を見出すことが難しかったのだと思います。
とはいえ、これからの住宅であれば、中古市場が立ち上がるのではないでしょうか。ストックとして家があって、イチから建てなくても良いなら、平均的な日本人の生涯可処分所得はずいぶんと上がるはずなです。
日本の住宅の平均寿命が30年から イギリスのように100年になるのか? ぜひ期待したいところです。
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