kurakenyaのつれづれ日記

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マンションの法と経済学+ヘタレてる話

3章 後半 マンション

 

さて、今日は3章の後半なのですが、ところで僕は英語の論文を書いていて、その校正でこの一週間は死ぬほど忙しかったです。

 

 

Reviewerに指摘されたことを書き直そうにも、英語では本当にどう表現すれば良いのかわからないので、日本語の10倍の時間がかかって、10分の1しか伝わらないという感じです、、、クソーー

 

おそらく日本人研究者なら誰でも感じるこの限界!! 何か こう世界から切り離されているという感じです。ニュートンラテン語でprincipiaを書いているので、そういうふうに英語で教育を受けたかったなあ。絶対書ける程度にはなったはず。ハアーー

 

仕方がないので、気分を入れ替えて行きますか、、、、

 

 

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マンションには区分所有権という法律がありますが、これもかなりアレな法律です。区分研所有者、つまりマンション所有者の4/5の決議がないと、建て替えが決議できません。十分に年をとって建て替えるだけの資金がある人は少ないはずなので、建て替えによってよほどの利益が出ないと建て替えは事実上不可能になってしまいます。

 

 

現在でも老朽化マンションの問題が云々されていますが、これは一方的に悪化すると予想されます。この点について、山崎先生は実証研究を行っています。東京駅から15分の駅に、徒歩7分、個数50戸の築30年、7階建ての4階という設定で、分譲マンションと、REITなどの賃貸専用マンションの価格を比べました。

 

 

結果、自己所有が2021万円、賃貸専用は2406万円と385万円の差が出てきています。この差は、分譲所有のマンションには建て替えの交渉費用がかかり、今後の管理が難しくなると予想されることから生じます。 

 

 

日本の制度では、少数者保護が重要です。そのため、建て替えが決まった場合には、反対する区分所有権の権利者は、賛成者に対して権利の買い取りを請求できます。ところが、その算定基準は建て替え後の上昇した価格になるために、各所有権者には反対するインセンティブが生じます。こうして立ち退き条件に対して交渉の余地が大きいため、建て替えに反対して、できるだけ多くの補償金を引き出すことが有利になる反面、賛成者は補償金の支払いというリスクまで負うことになります。

 

 

では、一体どういうような代替案が考えられるのか? 

 

 

山崎さんが提案しているのは、建て替え決議と同時に、事前に推計した補償額も決議にかけるというやり方。これで賛成する人も反対する人も、将来の補償金リスクを下げつつ、意思表示できます。

 

 

もう一つはアメリカの統一コンドミニアム法のように、マンション住民は原則として再開発の主体になることはなく、マンション組織の解散の決議をするだけ、というもの。立ち退きに際して、各所有者は、事前に開発業者から算定された所有分額を持ち分だけもらって、基本的に別のところに引っ越すのです。これは良い!!

 

 

当然ながら、建て替えの場合には、建物を立てている間は住めません。つまり、区分所有権者は、一度転居したあと、また戻ってくる必要があります。大規模なマンションでは、そうした原則は、あまり現実的な気がしません。むしろ、アメリカ式のほうがスッキリしています。

 

 

しかしまあ、これはアメリカのような移動社会と、日本のような定住社会における、根本的な発想の違いです。  とはいっても、、、、マンションの所有者というのは、明確に寿命のあるものを自分の住居として選択してきた個人なはずで、それに対して強力な居住権の保護を与えるような意味があるのだろうか。

 

 

まあ法制度とは、もともと存在した小さな発想の違いが、次第に既得権益や社会の常識となって、自らを再生産するようなシステムです。小さな効率性の改善というのは、再開発ができないとかの小さな問題ではまったく注目されないものです。大地震の後の建て替え問題など、よほど大きな事件でも起きなければ、検討する必要は感じられないものなのが難しいところですね。

 

 

 

 

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