kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

ロック的な自然権思想を突き詰めると

皆さん こんにちは.


スプーナーの「反逆にあらず」
http://www.freedomforallseasons.org/TaxFreedomEmail/LysanderSpoonerNoTreason.pdf


を読んでみました.ここでいう”反逆”という意味は,「アメリカ独立革命におけるアメリカ人たち,つまりワシントンなどの建国の父は,イギリス国王ジョージ3世に反逆したのではなくて,そもそも自然権としてジョージ3世と,当時のすべてのアメリカ人は何の信頼関係もなかったのであるから,”反逆”というような言葉の使い方自体がおかしい」ということです.


また同時に,アメリカ国家というものについても,スプーナーを含めてどの個人も他人と社会契約を結んでいない以上,その否定は”反逆”ではないということでもあります.


スプーナーの文章を読んでいると,ロスバードにとても似ていると感じます.自然権に基づく倫理的なアナキズム功利主義=効用に基づいた分析的なものではなくて直感的な正義感に基づくもの.


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ヒトが農耕をはじめれば,蓄えるものとそれを奪うものが出てきます.つまりその時点から,奪うためであれ,守るためであれ,国家を形成して生きてきたはずです.よく狩猟採集民族では強大な権力を持つ王がいないという報告がありますが,それは基本的に,狩猟採集民族の社会では,命をかけて奪うべきものも,守るべきものも少ないためだと考えるのがゲーム理論に合致した説明です(海賊も意外と当時の絶対王政のヨーロッパ諸国よりも,はるかに民主主義的・平等主義的であったわけですし).


しかし,専制国家が長らく続けば,それに反抗するよりも,むしろ進んで協力してその分前に預かったほうが良いという状況が続くでしょう.モデルのパラメータにもよりますが,すると,「国家を自ら肯定して,むしろそれに協力する」という行動戦略が有利になり,進化します.これが「隷属的な精神性」あるいはそうした「神経回路の発達傾向」の進化・定着です.


イヌは自然と人間についてくるようになる,つまりそうした精神性をもって生まれてきますが,ネコにリトリーバーのような芸を教えようとしても,それはネコの神経回路の発達状態によって不可能です.まあ,そうした違いが次第に生じるということなのでしょう.


それにしても,スプーナーを読んでいると,何か国家という権力関係の実在を信じて平々凡々たる日常を送っている自分が,何かブタ小屋のなかで処刑を待っているだけの奴隷であるように感じられます. ロック的な自然権思想を説く法学者は多いですが,社会契約説の擬制というのは所詮は国家を“なんとかして”肯定したいがためのフィクションです.


高校時代以来学んできた自然権思想を突き詰めれば, その論理的な帰結は,契約していない個人には国家というものの強制力は及ばないと考える他はないのですが,僕は無政府主義に転向するまで,そうした国家を否定する考えに思い至ったことがありませんでした.また日本人でそういう主張をしている法学者を見たことも,聞いたこともありません.結局は,良くも悪くも,見えないものがあると信じる,信じたいというような神経回路が,アジアのヒト集団の遺伝子に高頻度で存在するのでしょう.


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