kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

6章 リカード効果

皆さん こんにちは

第6章は,さらにオーストリア学派の生産構造論が展開されます.

要点を言うなら,つまり銀行が企業に融資をする場合,それは既存のマネタリーベースに追加して行われる=信用創造なわけです.ここで投資は増えるし,消費もそのままなので,経済は好景気に沸くことになります.


確かに一時的に企業は融資を受け取って,投資をするのですから,一見して社会全体はより生産的になりそうなものです.しかし,これは経済主体全体の(信用創造=インフレがなかった場合の)消費性向や貯蓄性向とは相容れないものです.


そのため,拡大された信用の分だけ後にインフレが起こり,追加的な投資は採算があわなくなって取りやめ=流動化されます.これが経済危機であり,不況です.こうして,経済は好不況の波を経験し,これが経済循環になります.


よってオーストリア学派の考えでは,本当に「循環」しているのです.その基本的な原因は銀行による信用創造から生じる,本来は不可能な好景気が破裂することで今度は不景気になります.

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さて,リカード効果という言葉があって,これはリカードの等価定理ではありません.オーストリア学派の資本理論では,消費財は経済変動の影響を比較的受けませんが,資本財は大きく変動します.それで資本財が高くなれば,起業家は(比較的)安くなった労働をより多く使い,資本財が安くなれば(不況時)労働を比較的使わない生産様式を選ぶことになります.これがリカード効果です.


信用創造は,労働と資本の相対価格に影響をあたえるので,経済に悪影響を与えることになります.なぜって,それは本来は技術的には非必要な価格変動であり,資本家・投資家・起業家の経済計画を歪ませるからです.これが経済危機と不況を生み出す原因となります.


マネタリストの主張のように,物価全体が上下するということではなく,資本財と消費財,労働の相対価格が大きくうねることが,経済変動のもっとも悪い点だというのです.それは生産構造の歪みを生み,誤った投資を誘発することになるからです.

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すでにこれはミーゼスのヒューマン・アクションやハイエクの『価格と生産』などではっきりと展開された議論なわけで,今回それをデ・ソトがまとめて説明し直しています.


マクロの主流派の考えで行くと,すでに「循環」と言う言葉自体が使われていなくなって,一般に「経済変動」と呼ばれています.まあそれはフーリエ解析なんかをすると,循環的な成分が見つからないからです.


この辺の落とし所は難しいところですが,つまり循環ではないのでしょう.一般に定常性を持った変動(トレンドあり)は常に循環のように見えてしまうという認識の錯覚なのだろうと思います.あるいは,(人間の知覚や認識などに基づく)経済になんらかの剛性値のような固有値でもあって,ある周波数の振動が発生するということも理論的・抽象的にはあり得ますが,,,


なお,7章はオーストリア学派から見た,主流はマクロの悪口です.マクロと言っても,デ・ソトの分類では,マネタリストケインジアン=ニュー・ケインジアン=new classicalというわけで,そもそも現在の著名なマクロ経済学者の全員が誤った方法を採っているいるということになります.


なるほど,確かにマクロ経済学はそれなりの学問的なまとまりがあって,オーストリア学派はその枠の外にあるので,そういう括りは可能なのでしょうが,常識から行くと,??な感じが残ることでしょう.


オーストリア学派の資本理論のほうが僕は新古典派よりもリアリティがあるとは思いますが,やはりある程度計量的にやっていかないと,不可知論に陥ってしまうように思われます.誰か,やる気のある人にぜひともチャレンジしてもらいたいものです.




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