kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

「土の文明史」読んでみた

「土の文明史」を読んで見ました。アマゾンに書いた書評を転写します。

http://www.amazon.co.jp/dp/4806713996/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1317402385&sr=8-1

???????????????????????

著者の論点を適当にまとめさせてもらうなら、

1、人間の文明は、穀物栽培によって次第に土壌を失われ、完全に失った時点では崩壊する、

2,黄河の上流は今は荒れ果てた砂漠だが、かつては豊かな耕作地帯であった、

3,ローマは半島の土壌が痩せると、地中海世界の属州からの穀物によって支えられたが、現在の北アフリカ、中東の地域は今では人口のまばらな砂漠である、

4,同じく、イギリスでも土壌が侵食され続けたが、この代わりをアメリカからの穀物に頼るようになった、

5,アメリカ農民の西進も、頭部でのタバコや綿花のプランテーションによって土壌が痩せたために、新たな肥沃な大地を求めた結果である、

6,イースター島の人口崩壊も、マヤの崩壊も土壌の急速な侵食によって、穀物が激減して人口が維持できなくなった、

7,アイスランドの荒地も、ヒトが来る前は森林であったが、過放牧による土壌の流出で荒れ果てている、

8,現在も土壌の侵食は続いているため、近いうちには食料の生産は減少して、現在の人口を支えられなくなる、

9,土壌の喪失を留めるためには、不耕起農法や、また有名なところではピメンテル、ローデールなどの有機農法がある。20世紀に主流化した化学肥料と耕作機械に頼る従来型の大規模農業をやめて、そうした方法に転換する必要がある、

10,しかし、これは直近の利益を求める農民や企業には難しく、かつ政治も大規模農業に手厚い補助金を出してしまっている、

という程度だろうか。

私もイースター島などの話は読んでいたが、この本を読んで、土壌の重要性を改めて強く認識させられた。また、ローマ帝国がなぜ滅びたのかについても、土壌の流出によるという説は、少なくても主流ではないと記憶しているが、私には説得的であると感じられた。不耕起農法、有機農業へのシンパシーも合理的であり、よく理解できる。

また、企業や農民が長期的な土壌の維持といいう視点を欠いてきたために、多くの地域が耕作不能になって放棄されてきた点も経済学的に納得できる。耕作の外部性が十分に認識されていなかったということだろう。

しかし、将来もそうであるだろうという点については、納得できない。30年程度の長期において土壌の維持が重要なのであれば、ハイチの小規模な小作農民のような限界的な地域ではともかく、ドールのような会社はその大規模農園の維持を優先してもフシギではない。いや、むしろ、そうするはずであり、同じことはカーギルその他のメジャーについても当てはまるはずだろう。


政府の補助金がない状態で、大規模機械化農業よりも有機農業が優れているのであれば、そういったやり方は次第に主流になっていくはずではないのだろうか? 


著者モンゴメリーは、土壌を次第に失ってゆく現代文明の近未来に、暗澹たる世界的な食糧難を予想している。近いうちに世界的な飢饉が来るという可能性を完全には否定はできないのだろう。


しかし私はむしろ、バイオテクノロジーの進歩や農業方法の合理的な変革、あるいは新たなエネルギーや食料の開発という、人間の力による明るい未来の創造を信じるノウテンキ野郎である。