- 作者: 川島博之
- 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
- 発売日: 2011/08/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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友人が薦めてくれたので読んでみた。
内容を思いつくままで書きだすと、
1,TPPを考える際には、まず世界の食糧事情を理解する必要がある、
2,1950年代からの、緑の革命以降、食料は世界的に過剰に生産されている。アフリカでは飢餓が叫ばれているが、それは内戦状態にある一部地域であり、残りはすべて人口が急増しているほど、カロリーは満たされている。インドでも中国でも、高所得化に伴って、化学肥料を使いだし、自給できている。
3,ところが、食糧危機が来るというレスター・ブラウンなどの破滅主義者のいうことを根拠もないままに、多くの市民が信じている。それは、過去の飢餓に備える、人間の本能的な恐れからくる恐怖でもある、
4,それに乗じて、食料自給率などという わけの分からない概念を創りだしたのは農水省だ、
5,例えば、オランダはチーズとトマトを工場でつくり、大量に輸出しているが、
食料自給率はおそらく20%ほどだろう、
6,日本の農業にもこうした輸出は可能だろうが、それは工場で作られるような作物、レタスなどが限界で、イネ、ムギ、コーン、などの穀物は経済的に広い農地で機械がつくるしか、経済的には成立しえない、
7、つまり、農村の復興は不可能だが、コメに補助をさせているのは、農協などの権益団体の自己保全本能でしかない、
8,しかし、コメを自由化するのは、日本の地方のますますの疲弊と、人口の激減を意味するので、政治的には不可能だ。現状を維持しつつむしろソフトランディングをはかってゆくべきだろう、
というほどになるだろうか。
明快かつ平易な内容であり、みなに読んでもらいたいいい本だ。最後のコメ政策のソフトランディング以外にはすべて納得できる。
ジュリアン・サイモンが1995年に書いているように、すべての資源価格は低落している、というシナリは食料でもあてはまっているのだ。
しかし、これは深い闇だ。
そもそも人間は、世界の状態について、信じたい方向にしか認識しないような回路がある。それを乗り越えるのは、事実の直視だが、それには知性が必要だ。
だが、世界についての知識や、それに基づく政治は公共財なので、自分の悪い決断を他人に押し付けることができ、費用も強制的にぶんどれる。だから、よく知ったり、考えたりするインセンティブがない(by Bryan Caplan)。
でも僕はキャプランとは違って、それがインセンティブの問題だとはあんまり思っていない。そもそも、現在の人間の知性(遺伝子プール)の限界なのだろうと、、、
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