kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

有機農業は十分に効率的であるが、

今日地下鉄に1時間乗った間に、Micheal Pollan の「Omnivore's dilemma」(雑食動物のジレンマ)を、携帯電話のkindle app で呼んでいた。いつもながら、Kindleの便利さは結構なものだ。

http://www.amazon.com/Omnivores-Dilemma-Natural-History-Meals/dp/0143038583/ref=sr_1_1?ie=UTF8&qid=1309018746&sr=8-1

さて、この本は、アマゾンのサイトから、ベストセラーとして2年以上にわたって勧められてきたのを、たまたま2週間ほど前に買った。それを、時間を見つけて、ダラダラと読んでいるのだ。全体が叙情的、韻文的で、僕のような外人には読みにくいが、それは「有機農業」を扱う以上、やむを得ないことなのだろう。

実質的な内容としては、「コーンを与えてつくった牛肉は工場農業で、実は環境にも、経済効率も悪いが、政府からの補助金などで、有機農業よりも優遇されている。有機農業は、工場農業よりも十分に効率的だが、結局は、大きなスーパーマーケットからみると、取引コストの問題で主流とはなっていない」というようなものだ。素晴らしいのは、「J. I. Rodaleなどの一連の著作によって提唱されている有機農業がなぜ主流化しないのかといえば、それはスーパーとの取引費用の問題が大きいからだ」と、明言している点だ。

http://www.amazon.com/Organic-Gardening-J-I-Rodale/dp/B000J0FDEY/ref=sr_1_14?ie=UTF8&qid=1309019060&sr=8-14

僕は、昔から、Singer なんかが「有機農業は、工場農業に比べて、十分に効率的だ」と主張している際に、「では、なぜ、有機農業が主流化しないのか??」という疑問を持ち続けてきたが、それに答えているのである。

おそらく、日本でもヨーカドーやイオンのような大手は、無数の小さな農場との取引よりも、大規模な工場農業業者との取引を好むだろうが、それは、契約の手間を減らしたい、リスクを減らしたい、といった取引費用によるところが大きいのだろう。

とにもかくにも、スーパーや消費者の要請、あるいは政府からの工場農業への、抗生物質上下水道料金、飼料費用、など、そういった補助金が、アメリカで全盛の、コーンによる牛肉、豚肉、トリ肉の工場生産を支えているという事実がはっきりするのは、実に清々しい。

あるいはアルゼンチンやオーストラリアのタスマニアニュージーランドのように、牛肉は本来は牧草地でつくられる方が本来は効率的なものであり、アメリカという国の補助金システムが過剰であるために、現代のコーンによる工場農業、ファーストフード業界が第反映しているのだろう。この事実自体が興味深い。

あえて苦言を呈するなら、この本はアメリカの食肉生産がいかにコーンに頼っているのか、という点を起点に議論をするので、アメリカ以外の国では説得力が大きく下がってしまう。もちろん、アメリカのコーンは日本の食肉生産の飼料としても、使われているのだが、、、

ともかく、僕は「有機農業が、伝統的な従来型農業(化学肥料と抗生物質を大量に使うもの)と同じか、それ以上に生産的だという考えには、相当に疑問を持っていた。しかし、この本のおかげで、それが本当であり、生産性というよりも、法的な契約コスト、品切れリスクの問題が有機農業を阻んでいることがよくわかったので、みなさんにも報告しておきたい。