kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

敬愛する友人からの示唆

学歴は別に固定化してないよ、と書いたら、友人が

http://wiredvision.jp/news/201101/2011012721.html

を読むようにサジェストしてくれました。

えーと、言い訳をしましょう。この原稿がサイトしている第4著者のエリック・タークハイマーという人は、有名な人です。なんで有名なのかというと、「環境要因が悪い場合には、特に幼少の時には、知能や性格の遺伝率が下がっている」という結論を、10年以上も追いかけているからです。

今、僕がwikiを読んでみると、きっちりと3本も引用されていて、ややビックリしました。

これは僕も本当だろうと思っています。90年代の双子研究(Lowe Plomin なんか)でも、そういった報告はあったので、おそらく家庭環境がひじょうに悪い場合には、学歴に影響が出ているはずです。普通の家庭環境(これはどこからかの定義が難しいが)の場合は、成長するにつれて家庭の影響は急速になくなっていくということなのです。

たまたま上の記事にもJames Heckman が引用されていますが、彼がスラムの育児に関して主張しているように、家庭環境がひじょうに悪い場合には介入もありかもしれないとは思います。僕もこの点には興味があって、もっと大規模な研究が待たれると思っています。一体、どういう介入が、もっとも費用対効果があるのか?

http://d.hatena.ne.jp/kurakenya/20101122

ただ、「豊かな家庭は子供を塾に入れて、それでますます格差が固定化している」という俗説は、これまでの双子研究からは出てこない結論でしょう。アメリカで環境が悪いというのは、学校にいってさらに塾に行くか行かないか、家庭教師をつけるかというのではないので、この点について誤解があると感じるわけです。

やや散漫になってきてしまいましたが、しかし現実に貧困家庭の育児に介入するというのはどの程度のことを意味しているのか? リバタリアンは現行の義務教育制度を越えて、どの程度の介入まで認めるべきなのか??

これらの疑問に答えるためには、今よりももっと知識が必要だと感じますが、Heckman などの経済学者とTurkheimer などの心理学者が共同すれば、もっと多くを明らかにしてくれるのではないかと期待しています。