kurakenyaのつれづれ日記

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マニングの2D:4D 読んでみた

指の長さの研究で有名なマニングの『二本指の法則』を読んでみた。

マニングは、人差し指対薬指の割合2D:4Dが小さいことは、胎児期におけるテストステロン(男性ホルモン)のレベルが高いことを使った研究でたいへんに著名な心理学者である。

この2D:4Dを使った研究は、この10年間にひじょうに広く大量にある。それは、マニング自身が報告している、サッカー選手としての成功や、数学者としての成功など、明らかに男性度が高いほうが成功しそうな職業に限らない。つい最近も経済に関して、ロンドンの債権トレーダーでは、小さな値=男性性が高い、ほうが職業的な成功の度合いが高いことが報告されている。

こういった耳目を集める内容も本書には含まれていて、読むことが面白いというのは事実だ。しかし、私がむしろ驚いたのは、著者マニングがそういった単なる思い付きの学者ではなく、進化論に基づいた論理を展開している点である。

例えば、男性のペニスの発生過程を調節する遺伝子(homeo-box)は指の発生も調節していることは広く知られている。しかし、著者が指摘するように、この薬指とペニスの調節遺伝子が、進化の過程で生物が陸上に上がり、その結果、強い指の骨と相手に精子を確実にメスに送るための外性器が共に必要になったために、相関的な関係があるのだという説はもっともらしい。薬指がよりテストステロンに反応しやすく、毛深いという事実も興味深い傍証となっている。


こういった学者好みの論理は一般受けはイマイチかもしれないが、私のような進化論者にとっては、むしろ報告の信憑性を高めてくれる。

最後に、著者の主張する、皮膚のメラニン量=肌の黒さが病原菌への耐性を高めているという仮説はひじょうに興味深かった。マニングはさらに、この病原菌耐性が、一夫一婦制などの婚姻システムとも相関しているという。一夫多妻の競争の高い社会では、男性の平均的なテストステロン濃度があがることになるが、その副作用として免疫力が下がる。その代償として、男性は肌のメラニン量を増やして、病原菌に対抗するようになるのだという。

これが本当なら、集団内においても、肌の色の濃い男性はより乱婚的であり、激しく性的シグナルを送るだろうと予測される。これは一体本当なのか?? 誰か確かめてもらいたいものだ。

というわけで、マニング教授は色物ではなく、真の学究の徒であることがわかり、私は大変に驚き、感銘を受けた。皆さんも、ぜひ読んでみてください。