kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

移民のどこが悪い?

kurakenya2009-03-05

Frank SalterというMax Planckの政治学者のを読んでいる。
この人も生物学から社会科学を構築しようとする意味で僕と同類だ。
なかではW.D.Hamiltonが最も引用されている。
これは当然と言えば、当然か。


彼の数値的な集団間の遺伝距離の理論は見るべきところが大きい。
とはいえ、その基本的な論理は非常に単純な集団遺伝学のあてはめで、
「人間集団がある国に移住するということは、
carrying capacity(可能的な最大生存数)を一定とすれば、
その地の現地人の存在を脅かす、
また政治的に圧倒的になるため、
先住民の遺伝的な利益に反する。
これが民族紛争、人種紛争の原因だ」というものだ。


これはこれで正しいのだが、問題はcapacityが一定ではないというのが、
経済学という学問の素晴らしい発見なのだ。
それは政治学者の立場からは、まったく理解されていない。


スミスの時代からの分業の利益もあるだろうが、
それよりもむしろ、人間の知識の発展がプラスサムを可能にしているのだ。
ガチガチの生物学者であれば、それはここ300年のことに限っており、
長期的には人間はせいぜいあと2倍程度しか住めないだろうだというかもしれない。
エドワード・ウィルソンやジャレド・ダイヤモンドならそういうだろう。



しかし、僕はこれはlegendだと思う。
どうしてか、人間はいつも資源は枯渇しつつあり、人はこれ以上増えることができない、
もうすぐ飢餓が訪れる、みたいな都市伝説を信じている。


本題に戻ると、確かにアメリカの白人は近いうちにマイノリティになってしまうが、
だからといって、彼らの絶対数は増加し続けているのだ。
ただ、ヒスパニックの移民や自然増殖率、アジア系の移民率が高いだけだ。


ロンドンの白人もすでにマイノリティになっている。
しかしどこにおいても、白人の生活は下がってはいないことは明白だ。
1500年時点のアメリカ大陸のインディアンでさえも、
当時、数千万人以上いた彼らは一時的に疫病で激減したが、
現在は数億以上いるだろう。


どうして、capacityが一定などという常識的な発想をするのか?
これでは、中高生の常識から一歩も抜け出ていない。


経済学のもっとも偉大で、しかし直観的ではないのは
比較生産費の仮説だとサムエルソンは言ったが、
過去500年間の圧倒的な生産性の上昇の方こそ
emphasizeされなくては。