kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

金の内在的価値2

はじめまして reachさま
政府活動の縮小方向で同感していただけるのは
何よりも心強い限りです。
今後よろしくお願いします。


さて reachさんもすでによく勉強されているので、
ご質問に対して僕が答えることがあるようにも思えないのですが、
以下、思うところを書かせていただきます。


1、なぜミーゼスやロスバードは金本位制固執したのか?


これについては、彼らの流れをくむ多くの研究者がCato Instituteなどにいますが、
総じて金本位制の復活を考えているのはよく知られています。
今 たまたまロスバードの本が手元にあったので、
調べてみるとFor A New Liberty の182ページに
金本位制の復活が望ましいという記述があります。


これについては 次のご質問の
2、金はなぜ過大評価されてきたのか?


とも関連しますが、
無政府主義者のロスバードを含めて
つまり多くの最小国家主義者は
政府の通貨供給量の無制約な増加に足かせをはめるために
金本位制を理想と考えるわけでしょう。
しかし、無政府では、別に金が重視される必然性などないわけで、
この点、ロスバードが金本位を理想としたのは単なる学統上の
偶然、あるいは惰性ではないかというのが私見です。


現代的な貨幣理論はマネタリストと呼ばれたM.フリードマンに始まると思います。
彼は、金本位制は金を掘り出すための「本質的に非生産的で無駄な活動」を生み出してしまうため、
政府の通貨供給を6%なり、何%なりの
インフレの起きない程度の一定の通貨の増加率(NAIRU)を実現させるだけでいいといいます。


ハイエクはもっと先を行って、通貨は多様な会社によって発行されるべきだと言っていますし、
おそらく、これを受けてD.フリードマンは、「自由のメカニズム」の中で、
無政府社会の多くの銀行は、多様な商品バスケット(commodity bundle)のようなものを基準にして
通貨の価値を決めて発行することになるだろうと言ってます。
僕もこの点はreachさんと同じ意見で、これで理論は完結していると思います。


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さて金などの貨幣が経済内で自然に発生することは、
たしか1990年ごろのミネソタ大学の清滝さんの論文などが有名だったと思いますが、
交換の必要性から「何らかの商品」が、
ゲーム理論的に通貨として使われるだろうとはいえると思います。
単純に通貨がなければ、交換を常態とする商品経済には、あまりに不便だからです。


歴史的にみれば、
たしかに貝や石、果ては塩やタバコも使われたのでしょうが、
金や銀はそこそこ随所で少量は産出し、
「光沢」をもつという原始的な装飾的な価値を持つうえに
加工しやすく、安定した物質です。
金は銀よりも酸化などに対する安定度が高い分、さらに価値が高かったのでしょう。
今でも産業用需要は銀よりも金の方が大きいと思います。


現在であれば、プラチナやパラジウムなどでもいいのでしょうが、
単純にそれらは希少すぎて、
過去の社会ではゲーム的な均衡解とはならなかったのだと思います。


なお、中国や日本では1000年から19世紀までは銀が中心通貨でしたよね。
だから日本では「銀座」があるわけです。西洋人は金の方が好きだったようですね。


答えになっているのかは自信がないですが、
つまり「金に対する過大評価」というものは存在し続けてきたと思います。
なぜなら、金は交換媒体という、どの人もが必要とする物質となってきたからです。


合理主義者である僕は別段 金に固有の特別な内在的価値などはないと思いますが、
おそらくは金の物質的な安定性と希少性、そして「光る」という物性が歴史的に特殊な価値を
金に与え続け、支配者に貨幣としても、貴金属としても珍重されてきました。
そういう歴史が、現在でもなお金にハロー効果を与えているのでしょう。


つまるところ、繰り返しになりますが、
僕の意見はreachさん、あるいはハイエク、D.フリードマンと同じで、
ガチガチの合理主義者として、貨幣は各発行会社が自由に多様な物質、
(あるいは株式のような権利でもよい)とバンドルして、
インフレしないように競い合えばいいというものです。


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末筆になりますが、結局はインフレになる以外はないのが
国家の管理する通貨の問題です。
このインフレ時に政府はseniorageとして、減価する通貨を使って
人々からインフレ税を徴収するわけです。


慢性赤字のバラマキ型の民主主義国家ではやむを得ないとはいえ、
実に残念なことです。


早く、グーグルなんかが発行するポイント制度が世界的に普及して、
virtual moneyとなり、各国の通貨以上の信用と価値を持つようになってほしいものです。
そういう時代はネットのインフラの整備によって、
だんだんと可能になってきていると思います。
そういう方向でぜひとも努力いたしましょう。


それでは、今後ともよろしく。
蔵研也拝