数年前に「法と経済学」の観点から
「はたして有限会社の制度は望ましいのか?」という問いについて
しばらく考えていたことがある。
ここでの問題点は、kyuuri氏の疑問
http://libertarian.seesaa.net/article/89036684.html
と同じものだろう。
有限会社とは、つまるところ国家による特権だからだ。
考えてみれば、
有限会社などがない方がマトモな企業統治がおこなわれて
資本主義はより反映するかもしれない。
今はちょっと忘れてしまったのだが、
Journal of Legal Studies, Journal of Law and Economics , Yale Law Review,
のどれかだったと思うが、
契約責任や契約に伴う詐欺などの不法行為は有限責任でいいが、
事実行為としての不法行為は無限責任を取締役と株主が負うべきだとする論文があった。
これはきわめて説得的だ。
たとえば、水俣病のチッソの場合、
被害者はチッソが有限会社であると知っていたわけではなく、
鷺のように契約関係にもなかったからだ。
この場合、無限責任を負わせるべきだというのが倫理的にももっともだ。
反面、多くの取引は有限責任制を理解した上での行為なので、
有限責任も理解できよう。
日本の商法上の判例では「法人格否認の法理」などという
作為的な場当たり主義を使うが、
これは自由契約の促進上は望ましくない。
だれが究極の責任を負うのかが、裁判所の判断にゆだねられてしまうからだ。
株式会社の有限責任制はそもそも17世紀のイギリスやオランダにおいて、
貿易のリスクを分散するために生まれたもので、
他者に不法行為をするような場合を想定していなかった。
それを考えるなら、現代にふさわしい「有限責任」ということを考えるべきなのだろう。
教えられたことしか繰り返せない法律家にとっては
こういう発想は理解不可能だろうことが残念なのだが、、、