kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

トンデモと人はいうけれど

7月ににロバート・アーリックによる『トンデモ科学の見破り方』を読んだ。
著者は物理学者だが、物理学以外も含めた9つの、常識に挑戦する学説をとりあげて、
それらの可能性を科学的に検証するというものである。
いわゆるトンデモ本では、まったくない。
仮説の一つ一つがまともな科学として、一笑に付せるようなものではないからだ。


その方法論よりも、むしろ個別の判断基準を読むと、著者の科学者としての素養が理解できておもしろい。
特に興味深かったのは、「銃が増えれば、犯罪者は反撃を恐れ、犯罪は減る」という命題である。
これはアメリカでは広く知られた論点であり、ロットという有名な経済学者がこの命題を肯定している。
が、アーリックはロットの論文を精査して、間違いであると結論している。
読めばなるほどと納得できる論理の組み立てである。


もう一つは、石油などの炭素資源は生物由来ではなく、地球の深部から染み出してきているという
ゴールドの説である。これは前に聞いたことはあったが、アーリックの分析からは、むしろこちらが正しいと
いうように結論付けられるだろう。これは驚きでもあるし、より真剣な研究の対象となるだろう。
なお、この説が正しければ、石油は実質的には無尽蔵に存在することになる。


また、紫外線は血中のコレステロールビタミンDに変えるため、皮膚ガンの可能性を考えても、
差し引きで有益であるというのも、むしろ説得的である。
これにも紫外線を避けるべきでないという重要な社会的な意義があるだろう。


その他の話は、ワームホールなどのタイムマシンの可能性、あるいはタキオンの存在などであり、
背景知識なしにはやや判断が難しくなるが、しかし思考の過程はひじょうに楽しい。
物理科学者ではなくとも、科学マインドを持った人であれば、読書時間を有意義に過ごせると思う。
そこで、小生は今日訳されていない続編『8 preposterous prepositions(8つのとんでもない考え)」を
手に入れたので、また明日から、読み進めてみるつもりだ。