皆さん、こんにちは、お久しぶりです。
先日同僚と飲みに行って、経営学の話になりました。そこで、僕は、経営学部出身の同僚に向かって、「経営学はお伽話であって、まともな知性の持ち主がやっているようじゃないよね、例えばサラリーマンに人気のドラッカー、ポーター、日本では伊丹さんとか、オレなんか大学時代から侮蔑しまくりだーー」などと本音をい言いました。
彼曰く、「確かにその通りですね、でもマトモな人の本もたまには出てますよ。また読んでみて下さい。」と本を紹介された。
世界の経営学者はいま何を考えているのか――知られざるビジネスの知のフロンティア
- 作者: 入山章栄
- 出版社/メーカー: 英治出版
- 発売日: 2012/11/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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で読んでみた。文章はとても平易なエッセイであって、確かにサラリーマン諸氏でも、容易に内容が理解できるようになっている。しかし内容はさすがにマトモな経営学の、現代の学問の解説書であって、こうしたマトモな本の存在にはちょっと驚いた。
本書いわく、事例研究の経営学には、命題の科学的な検証可能性も、反証可能性もないし、それが当然だと思われているフシがある。しかし、本書では、ドラッカーもポーターもお話にすぎないという、アメリカやヨーロッパの経営学者の常識を解説して、それは学問としての経営学ではない、という。
彼の言う学問としての経営学とは、つまりは企業経営に特化したミクロ経済学であり、認知・社会心理学であり、ネットワークなどの社会学理論である。そこでは当然に、命題の検証に統計学も使われるし、あるいは規範論と、実証論の違いもわきまえることになる。
例として著者は、1,海外直接投資をリアル・オプションとして見る考え方、2,直接投資と、合弁会社のどちらが効率的なのかの議論、3,あるいは企業買収にはCEOへの心理的なプレッシャが存在するらしいこと、などを統計的に確かめた多くの研究を紹介する。(いちいち研究者の所属大学や研究スタイルを詳しく書くのも、いかにも社会科学者らしい)。
さて、僕はこうした考えは納得できるし、面白いとも思う。けれども、こうした手法が「実際の企業経営に役立つ」とは到底に思われない。少なくとも、経済学と同じで、近い将来に役立つようには思われないのだ。
もっと難しいと感じたのは、いかにも学者である著者の主張するような、規範命題(企業はこうすべきだ)と実証命題(企業はこうしている)は異なっているという指摘や、ベイズやノンパラメトリックな統計などは、サラリーマンにとって、まったく理解できないだろうし、同時におもしろくないだろうという事実。結局は、どこかに「科学的な経営」をする企業があって、そうしない会社よりも圧倒的に良い業績をコンスタントに挙げなければ、人びとは納得しない。けれども、現在の経営学はそうしたレベルにはない。
とはいっても、この本の意義は大きい。全体としてこの本が素晴らしいのは、こうした困難を承知で、それでも著者が経営者を対象としてマジメに語っているところ。論文なんかを読む時間もない人にも、ぜひとも学問的な面白さを伝えたいぃぃぃーー!
僕も昔、「マグロの経済学」について、そうした思いをぶつけたのが思い出される、、、、そうした情熱を失ってはならない、と痛感させられる良書だった。