kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

『お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方』

 またしても金持ち本ですが、著者であるライターの橘玲はいわゆる金持ち本とは距離を置いた記述をしています。そこに惹かれました。

 内容としては、しごくまっとうなもので、例えば、家のローンは土地への一点重視のポートフォリオであり、戦後の日本では機能してきたかもしれないが、これからは危ない とか。会社をつくって節税しなければ 単なるサラリーマンではお金持ちにはなれない とか。株の運用でもファンダメンタリストチャーティストは互いに侮蔑しあっており、その両方ともが学者の検証によればまったくあてずっぽうに投資しているのと同じである などなど。

 僕としてはもっとも興味深いのは著者がPTの信奉者であるということです。PTはpermanent travellerのことで、カリブ海租税回避地にすんでいるアメリカ人の富豪に多いといわれます。悪くいえばつまりは脱税をするために居所を複数持ち、それによってどの国家にも税金を納めないような人たちで、よく言えば「主権は国家ではなく、個人にあり、課税はつまり強盗であり、課税する権利などどの国にもない」というロスバード的な無政府主義者であると言えるでしょう。

 僕自身もぜひともPTになりたいものですが、しかし現実にPTになるには最低限度でも億単位の資産が必要だし、また大学教員というような制約的な職業ではなく、フリーランスのライターでもなくては難しいでしょう。

 ただ 今のように「取りやすいところから取る」というポリシーしかない税制は徐々に崩壊せざるを得ないし、それは人類の活動がますます世界化していることからも不可避です。無政府の社会には税金はありません。全地球的な規模の活動をする個人にふさわしい社会はanarcho-capitalismしかないのです。