kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

形質にはトレードオフが遍在する

迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか

迷惑な進化 病気の遺伝子はどこから来たのか


この本は、2007年の出版だが、ひじょうにオモシロク読めた。


まずは、各種の病気に対向するために遺伝子プールで拡散している遺伝子が、別のかたちでは、表現型に不利な影響をもたらしているという話。この手の話の代表例は、マラリアに対する鎌状赤血球貧血の劣性遺伝が有名だ。そうした話は、他にもたくさんあるはずだ。


この本では、いつくもの話が載っている。


鉄分を取り込み過ぎて肝臓などに悪影響を与えるヘモクロマトーシスという病気は、(瀉血療法によってコントロールできることと)その遺伝子はマクロファージの鉄分を貯めこむため、ペストなどの病原菌への鉄分供給を絶って、結果病気への耐性を高めていたのだろうという。


あとは、寒い時に体内の水分をオシッコにして排出しようとするのは、血液の水分濃度を下げて、凍結しにくくして、凍傷を防いだためではないか、という話など。水分を固めて、氷による細胞破壊を防ぐ話は、カエルだけでなく、他の生物でもよく使われていると聞く。



そういえば、最近の技術では、瞬間凍結によって、水分の凝集を防ぎながら凍結させるというのもあるし、あるいは電磁場によって零度よりも低い温度での無凍結保存も実現している。いろんなテクノロジーが実現しているなぁ


さて、後半で面白かったのは、エピジェネティクスの解説。これは各種の遺伝子がある種の状況、例えば低栄養状態や、喫煙などの毒素の状態によって、胎児の遺伝子がメチル化されて、その発生に影響が出るという話。これはマウスの話が有名だが、今後の展開を待ちたい。


バッタやトカゲほどのライフサクルの短い生き物なら、環境適応の一環として、どの遺伝子のスイッチが発生時にオンになるののかが決まるということも納得できる。例えば、バッタは食料がなくなると、子どもの羽を長いイナゴにして、違った地域への移動に適した形に発生を変化させるという話が有名だ。


ヒトでも、食料不足などに関しては、そうした適応があっても不思議ではない。だけけれども、そうしたメチル化が有利であるなら、そうした状況は不安定ではあっても、頻繁に起こるような性質のものであるはず。飢餓は典型的にそうだが、、その他のどういった状況で、ヒトのような成人するまで20年もかかる種で、どの程度に成り立つのか??


という疑問は ほとんどエピジェネティックスの意義に懐疑的な研究者がもっているようだが、、、、



http://westhunt.wordpress.com/2012/10/26/epigenetics/