こんにちは。
アメリカの貧富の格差が広がっているのは有名だが、この40年はスゴイ。それが下のSaez and Zuckmannの資料。なるほど、圧倒的に金持ちが金持ち化している。
彼らは、戦後40年間の最高累進税率90%の時代に戻せば良いという意見。そのときは確かに格差が大幅に小さかったのだから、という。
でも、それってパッとした話じゃないなあ。政府セクターが肥大化して、ムダなことをやりすぎているという支出面を見ずに、単に「可処分所得を平等にするにはどうすればいいか」という議論をしているからだ。
おそらく彼らの分析と提案は正しくて、税制改革によって累進化を進め、世界各国が協調すれば、もっと可処分所得の平等な社会は実現できるだろう。とはいえ、我々に価値を与えてくれる起業家たちの金を、我々一般人と同じ程度にまで引き下げる「べき」という当為的な考えは、ますます肯定できない。
おまけに、彼らは「なんのために所得の平等」を求めるのか? 政府セクターの非効率がわれわれの生産性を半分にするなら、税を集めることそのものが、我々の社会の貧しさにつながる。とくに大きな政府による再分配には役人・既得権益者などが群がるため、そもそも税金を集めるべきではない。それは個人の財産の盗みだからだ。ただの妬みとしか思われない。
というわけで、僕は著者たちの知性の高さとその徹底した現状分析は理解できるが、そもそも彼らが「政府は出かければでかいほど良い」を無邪気に信じているところがまったく納得できない。
どうして医療や年金、教育を政府が担当しなければならないのか? 富豪たちによる教育機関では十分ではないのか?? 彼らの議論には、もっとも説明されねばならない問題が、そもそも議論の前提となっている。実に経済学者王道の本だ。
かれらが、すべての経済活動にあると主張しているような、そんなに外部性などは存在しない(と僕には思われる)。世界観が違いすぎるのだ。実に現代的な社会主義者、フランス人経済学者である。また、さすがトマ・ピケティの友人だけある。
そういえば、ブランシャールもフランス人だったな。次に読んでみることにしたい。
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