こんにちは。
昨日と同じ流れで、たまたま図書館で見つけた岸由二さんの「回顧録」を読んでみた。本人が書いているように、70-80年代の「包括適応度」革命について、主にその次代に書いたエッセイを集めたもの。
当時の僕は大学でまったく違う畑にいて、ハミルトンの包括適応度の革命を完全に「すごいもの」だと考えて、人間にも応用したいというウィルソン的な野望を持った。まさか、その次代の老人たちが、ルイセンコ学説、今西学説などを信じたいために、岸由二さんに嫌がらせまでしているとはまったく想像もしなかった。 悪しきかな、日本の学会。
ところでやや驚いたのは、岸由二さんは慶応大学の「経済学部」の教授であったこと。当然進化生態学者は生物学者なので、「理学部生物学科」にいるものだと思っていた。彼はまったく社会科学について言及しているのを読んだことはなかったし、一般向けの(進化生態学の)本も書いていなかったから、僕のような学会に属していない学生にとっての彼は「翻訳者」なのだったのだ。
当然ながら、今の若者にはなんの意味もないが、共産主義イデオロギー、あるいは英米思想への反感というのは、当時の学者の目を曇らせていたということなのだ。今の僕は新古典派の経済学のどれだけかは「思い込み」によって構成されていると思っているが、そういった時代的な背景からの世界観への影響というのは無視できないものなのだろう。
生物学は革命を終えたように思うが、他にも学問領域は無限にある。そこでも中世ヨーロッパの神学、あるいは江戸時代の儒学のように、その次代の主流の思想から逃れるのはほとんど無理なのかもしれない、、、うーん、そうだとしたら残念なことだ。
ともあれ、80年代から岸由二さんの以下の翻訳本からは多くを学ばせてもらった。本当にありがとうございました。
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