こんにちは。
ちょっと考えてみると、長期的に何が一番大きな問題なのか? という問いについては、いろんな意見がありそうですが、100年程度で見ると、多分、多くの人にとっては地球温暖化なのだろうかと思います。グレタさんも大人気だし。
さて この本によると、おそらく人類の知的水準の低下だろうということになります。
少なくとも19世紀のヴィクトリア朝の時代まで、つまり産業革命が人間の生活水準を劇的に向上させるまでは、人類の知能は次第に上がってきたはずです。女性は10人ほどの子供を産み、そのうち二人が育ってきたことからは、おそらく望ましい性質のすべてが次第に選択されてきたと考えられるし、少なくとも知性に関してはそういう歴史的な研究もあります。
ということを前提にすると、この100年ほどはほとんどすべての人間が成人して、生殖しているからには、(次第に有害な変異が蓄積して)病原菌体制にしても、知能にしても劣化しているだろうと考えられます。(ちなみにこれは著名な進化論理論化であったWilliam D. HamiltonのNarrow roads of gene landにも指摘されています。)
こうした考えは別に新しい主張ではないのでしょうが、問題はそのスピードです。
この最近の知能低下について、もっとも有名な論文を書いたのがMichael Woodleyというイギリスの学者なのですが、彼によると、その速度は急速で、すでにヴィクトリア朝から、イギリス人の知能は1sd近く低下していると主張しています。ほとんどの学者はこの推計に(おそらく直感的に)同意していないようですが、Woodley et al.の論文では、もっとも基本的な指標である「刺激への反応速度」を使っているので、かなりロバストだと考えられるのが論争点です。
(もっと論争は複雑な部分があって、実際に、この100年の間に栄養や住環境はひじょうに良くなっているので、遺伝型が劣化しても、表現型としては向上する(Flynn効果)あるいは、同じような状況にあったとも考えられる)
さてさて、もし本当に100年で1sdも知的に低下するなら、次の100年も同じように1sd下がるのではないでしょうか。そうなれば、数学や物理の発達は止まり、文化的・社会的にも再び中世に戻ることと考えられます。
もし別の学者が考えるように、100年の低下が1/5 sdであるなら、500年で1sdになることになります。さあ、どうなのかは実際に蓋を開けてみなければわかりません。
でも、近い将来にcrispr cas3などで、どれだけかの人たちは子供の遺伝子を改造するようになることは間違いありません。多くの病院遺伝子の排除と同じように、誰しもが子供により高い運動能力なり知性を与えてやりたいと考えます。
とすると、人の多様性も、さらに社会的な結末も、爆発的に急速に広がるように思われます。
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