kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

今回の文明崩壊

ボクはバスティアを翻訳しているくらいだから確かに自由主義者なのだが、自由主義的な移民政策が大きな政治的な軋轢を生み出すだろうということも、よく理解している。

 

おそらく、ボクの個人的な人間観・科学的な世界観には、自由主義的な政策には都合の悪いものがものすごく多く存在する。カーネマンも繰り返して主張しているが、通常、人は自分の政治的な価値観に合致した、都合の良い人間観、世界感を採用したがる。だから近く、多くの自由主義者たち見ると、「お前は言ってることが矛盾しているじゃないか!」と批難されることになるだろう。

 

(もちろん、別に論理的な矛盾はしてませんよ。あくまで、自然の認識が、支持する価値観に対して、あまり都合が良くないだけ。)

 

例えば、平等を目指す左翼であれば、「そもそも人間集団には遺伝的な差異は存在しない。環境を同じにすれば、すべての結果がおなじになるはず」というような、ルソーみたいな、あるいは主流のマスコミみたいな思想にならざるを得ない。まあポリティカル・コレクトネスのドグマですね。

 

だって、遺伝的に違うなら、差は解消するのが(おそらく環境だけの場合よりも)難しいだろうから。

 

おそらく大学やマスコミにいない普通の人たちは、そこまで強くは人間の可塑性神話を信じていないんだろう。例えば、匿名のネットでは、あからさまな差別がはびこっているし、保守派の新潮・文春は、犯罪者の「悪辣な素因」を強調する。また、人びとは直感的に、行動が遺伝するということを(多くの場合は正しくも)信じているから、婚姻などにおいても犯罪者の子孫を差別をしようとする。

 

(まあ、朝鮮人差別とか部落差別とか、ボク的にはまったくオカシなものもあるが、大衆とは別段に合理的ではないものだから、単なるxenophobiaがそのまま差別につながっているんだろう。)

 

こうした話を書くと、ボクが政治家ではないとしても、自由主義の唱導にふさわしい世界観を持っているような人間ではないということが分かる。

 

ボクは自由主義を応援しているので、(無用な混乱を避けるために)自由主義について語ってはならない人間なのかもしれない。

 

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それはさておき、ある個人の知的な能力が高い場合、平均的に言えば、その所得も高い。過去の多くの論文からは、おそらく知能指数1ポイントあたりのリターンは2-3%程度のようだ。(気が向いた人はボクが昔紀要でサーベイしているので、読んでみて下さい。)おそらく潜在的な計測誤差が大きいので、この割合はおそらくもっと高い可能性があるが、それでもせいぜい5-6%といったところだろう。

 

さてさて、以下は、Richard LynnによるIQワールドマップ。

 

 

http://viewoniq.org/wp-content/uploads/2019/03/WORLD-IQ-MAP-QNWSASGEO-1024x460.png

 

 

こうして、国レベルのIQ平均と平均所得の相関をみると、1IQポイントのリターンは9%の所得増にもなる。この事実はまた、同じ学歴の場合でも、都市の賃金が田舎よりもかなり大きいこととも符合している。では、こうした賃金格差とIQの相関が、個人と集団で異なるというのは何を意味しているのか?

 

 

集団の所得9%から個人の能力3%を引いた6%ほど(ここでは、そんな感じだとしておく)は、つまり外部経済となって、周辺の他人の所得になっているのである。

 

 

これは当然のことで、例えば、優秀なアントレプレナーがいたとしても、電気や道路のない場所では、企業は成長しないだろう。シリコンバレーにはイノベーターがいるだけではなくて、投資をしてくれるエンジェルや関連企業など、その他のビジネス・インフラも十分に整っている。それはつまり、周辺に同じように知的な人間がいるということだ。

 

アップルが急に成長できたのも、下請け企業がビジネス上の取引契約を誠実に実行するからで、そうした周辺企業がなければ、ジョブスがいかに天才でもうまくいかなかったはず。同じように、フィンテック業界で有名な人達は、ニューヨークやロンドンにいることが多いようだが、そこには金融知識とコンピュータ知識の外部経済があるからだろう。

 

そうすると、地球人の誰にとっても、やはり先進国の大都市に住むというのがベストの選択になる。シリコンバレーでジョブスに寿司を握っていたシェフが、日本の片田舎の寿司屋で同じだけの所得が得られたはずがない。サービスは、基本的に輸出できないから。

 

こうして子供の教育、あるいは人生全体なんかを考えるなら、点賃金の国に留まるよりも、先進国に移住したほうが良いだろう。とすると、アメリカ・ヨーロッパ、日本などの都市が、低賃金の移民労働者であふれるというのは必然的だ。誰でも自分の子供に最大のチャンスを与えてやりたい。そしてそのためには、インフラがあって、周囲に才能に恵まれた人間があふれている方が、有利だろう。

 

 

こうした状況に着地点なんてあるような気はしないが、すべての都市で格差が広がり、各地にもっと大規模なゲーテッドコミュニティが急速に成長しそうな予感ではある。。。

 

もっと起こりそうな、世界的な文明崩壊については、また後日。

 

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