kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

第2章 都市の高度利用が成長を決める

 

 

 

さて第二章は 都市の高度利用が経済成長を決める です。

 

 

前回も書きましたが、東京は都心4区でも周辺23区でもベッタリと低層宅地が広がっていて、驚いたことに、(というわけでないか、山手線に乗れば明らかとも言えますが、)23区でも4区でも130人の人口密度はほとんど一定です。一階建ての広がったコンテナだと言っていいでしょう。つまり容積率の規制と、さらに小規模宅地優遇政策によって、東京はやたらと低度利用なのです。

 

 

対して、ニューヨーク市では、マンハッタン島では270人で、それ以外では92人です。つまり富士山のように、きれいに稠密性が変化しているということ。トランプタワーに住んで通勤時間を節約するも良し、郊外でゆったり住んで長時間の通勤をするのも良し。実際、スカーズデールなんか(開発制限が存在してきたこともあるが)普通のアメリカの郊外の住宅地という感じで、十分な広さの住宅が並んでいます。こっちが自然な都市の成長の姿でしょう。

 

 

僕が驚くのは、タワーマンションができると、やれ「コミュニティが崩壊する」、「高齢者にきつい」、挙句の果ては、「高いビルは子供の成長にも悪影響がある」とか騒がれること。そういうことはあるかもしれないし、いやあるでしょうが、郊外に人々追いやれば、彼らに課される長時間通勤のバカらしさ、無意味さとトレードオフがあることを理解してもらいたいものです。

 

 

なお、日本では荒川区のような低層宅地が自然だという「思い込み」があるように思います。香港やシンガポール、ニューヨークの人たちはそんなに不幸せなんだろうか? そういう風には見えません。

 

 

__

 

 

さて、もう一つこの章の楽しい部分は、瀬下博之さん(専修大学教授)の提案している「ビル開発のプット・オプション」です。

 

 

これは、例えば国立の高層マンションの建設に対して、裁判所が高層マンションの撤去命令を出したり、出さなかったりした事件 = 開発をめぐっての景観条例の解釈その他、についての経済学的な解決法を提案するものです。

 

 

ある地域にビルを建てるなど、開発をしたい業者がいるとしましょう。そうした場合に、業者には、地域の住民の持つ不動産について、現状価格での不動産買取プット・オプションを付与する義務を追わせます。そうすると、環境を良くするような開発は行われて、皆の利益になるので、オプションは行使されません。反対に、環境を悪くする開発案件では、不動産価格を下げるので、住民はオプションを行使すれば、低下した分は少なくとも補償されるということになります。この提案では、差し止めや損害賠償はできないし、住民の現状での居住権は保護しないのですが、少なくとも低下した財産価値は保護されます。

 

 

国立市の景観条例では、不法行為法709条の細かな要件定立という、不可解さの残る解釈での解決になっています。これに比べれば、所有権の調整としてはるかにincentive compatible でメカニズム・デザインとして優れていることがわかります。

 

 

開発には経済の外部性が伴いますし、それを口実にして現状維持が肯定されてしまうのですが、そうした外部性を契約で内部的に取り込むことで、都市の開発を効率的に行おうという考えなのです。

 

 

こうした試みはまだどの国でも実現していませんが、だからこそ日本でやってみて世界に実証してもらいたいのです。まあ、前例主義ばかりの日本ではムリか。。。

 

 

 

 _