kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

国土の均衡ある発展

 

都市は人類最高の発明である

都市は人類最高の発明である

 

 

思い出したので、もう一度グレイザーの「the triumph of the city」読んでみました。(余談だが、山形さんは実際には名前を貸しただけで、この本を訳してないと思う。なぜかって誤字が多いだけじゃなくて、solid state physics「固体物理」をソリッド・ステート物理と訳したり、明らかに学者じゃない人が訳しているから)

 

 

さて内容はとても興味深いものが多いのですが、あえて問題をいうなら、この本にはあまりにも多くの情報が詰まっていて、あれこれ入り過ぎのゴッタ煮のような感じなこと。それで、面白いと思うことを、もう少し個別に取り上げてみます。以前のブログと繰り返しも多いので、その辺はすいません。

 

 

  • エコロジーを目指すカリフォルニアで建築を認めなければ、その地域は一番気候がよくて暮らしやすいため、CO2排出が圧倒的に少ない。実際には、アメリカ人は同じだけ活動するので、テキサスに多くの住宅が移動してしまい、地球規模では反エコロジーに繋がる。

 

これは、本当にそのとおりで、結局、人はすべて「自分の周り」の良い環境が開発されるのが嫌いなだけ。NIMBY(Not In My Back Yard) つまりは単なるエゴということです。

 

  • 同じコンテキストで、都市においても、住民はすべて自分の街区の新規開発には反対するため、ニューヨークでも現在は新規開発が停滞している。

 

これは現在、少しは改善されていて、ハドソン川沿いのウォーターフロントに高層ビルが建築中です。しかし、パリが一番ひどいですが、確かにどの都市住民も自分の住んでいる環境を守るために新規開発には反対する結果、都市はむしろ金持ちの特権的な居住区になっています。日本では、六本木ヒルズなんかが典型的なのでしょう。

 

  • ムンバイはロンドンにならって政府が高層ビルを禁止してきたため、渋滞がとんでもないレベルに達しており、これは改善すべきである。

 

著作は2011年なので、今ムンバイを調べてみると、これは大きく改善されたようで10年以内には世界一の高層都市になる予定です。

 

https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_tallest_buildings_in_Mumbai

 

 

なるほど中国はすごいが、インドもそうなるほうが良い。渋滞は大気汚染を引き起こすからね。この点は総じて先進国のほうが住民運動で再開発ができなくなっているのでしょう。

 

都市の開発とは、つまり既存の住民の利益と、潜在的に都市に住みたい(現在の)郊外の住民の利益の対立です。既得権益を優先すればするほど開発は抑制されて、近郊からの通勤が続くという形で市民の費用が累積します。総じて左翼じみた人は都市開発反対のようですから、フシギです。おそらく彼等のサヨク的な直感では、福島に生まれて東京の大学に進学し、川越から都心まで通勤せざるを得ないような人は、利益衡量に値する弱者ではないのでしょう。

 

 

都市に住んで、自転車で通勤するような今ハヤリのライフスタイルを実現するには、グレイザーが主張しているように、もっと都心に高密度に高層住宅が必要なはずです。そっちの方がずっと環境には良いのに、なぜか勘違いサヨクが高層化に反対するのは止めてもらいたいものです。

 

 

高層住宅が好きな人はそこに住むし、郊外が好きなら郊外に住めばいい。税制や開発規制で国が特定のライフスタイルを優遇するのは奇妙です。

 

 

そういえば田中角栄はさすがに政治家で、「日本列島改造論」をぶち上げて、都市の利便性を田舎にももたらそうとしたようですが、それは企画自体がそもそもムリというもの。役人のスキな、「国土の均衡ある発展、経済利益の均霑」というスローガン自体が、都心部を押しつぶして、やたらとスプロールと資源のムダを生み出していることは、開発に反対でも賛成でも知っておく必要がありますね。

 

日本列島改造論 (1972年)

日本列島改造論 (1972年)

 

 

 

 

 

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