旧知の編集さんからいただいた、
という本を読んだ。
内容として僕の興味を引いた点をいくつかあげるなら、
1、日本の農業はデンマークやオランダのような先進国型の成熟輸出産業を目指すべきだが、
それは戦後の農協や農林族、官僚などによる内向き、保護主義的な政策のために、
まったく実現してこなかった、
2、農業の担い手は法人であろうが、自然人であろうが、どちらでもいいことであり、
農家の生活保障という政策は、むしろ農業を競争力のないものにしてきた、
3、同じく、農地も自由に取り引きさせればいいが、
ゾーニングなどによって農地として指定された土地は必ず農業に利用されるようにするべきである。
これまでは、農地の譲渡禁止といいながら、実際には有給のうちを増やし、
農家の次男、三男、の宅地への転換を許したりと、完全に農家保護の法制になってきた。
4、コメも日本文化とタイアップして輸出すれば、競争力はそれなりに生じるはずだが、
現在では兼業農家も専業農家も一緒に保護されるべきだと考えるため、
中国に着ろ1000円で売られるコメと、休耕地として飢えられているコメを区別できていない、
5、カロリーベースの食料自給率を政府レベルで考慮しているのは日本だけであり、
そういった発想は農業を振興することにつながらない可能性があるため問題である。
例えば、飼料を輸入して育てた牛やブタを食べても、
まったく食料自給率は変わらないことになってしまう。
などなど。
著者は農業経済を勉強してきたということで、
たいへんに農業への強い思い入れが感じられると同時に、
経営感覚もあるため、もっともな主張の本に仕上がっている。
この本には書いてないことだが、
例えば、神戸牛がおいしいのは世界的に有名で、
バスケットのスーパースター、コービー・ブライアントは
その母親が神戸牛に感動して名づけたといわれている。
オバマ大統領も来日した際には、神戸牛を名指しで食べたいといったではないか。
というわけで、日本の家電製品やクルマのように、
農業製品が競争力を持つことは十分に可能だという指摘は時折なされているが、
しかし、保護主義の政治的な主張は集票活動とあいまって、容易には弱まらないだろう。
なんといっても、競争力を発揮するには商品価値を高める努力などが必要だが、
現在の多くの農家は、そういった努力ではなく、政治活動で成功体験をもっているからだ。
著者は当然ながら、農業振興の政策はもっと単純なものだと主張するが、
僕はそもそもすべての政策は、まったく必要ないと思うし、
それが一番の農業振興策だとまたしても感じている。