ちょっと、不法行為にまつわる経済学について考えて見よう。
これはD.フリードマンの"Law's Order"に書かれている例だが、
彼の並々ならぬ論理的な能力を垣間見れて、楽しい。
(それで僕も「無政府・・・」の中で、ちょっと違った形で少しだけ触れている。)
僕が傷害事件の被害者になった場合、犯人に賠償請求する。
では、死んでしまった場合は何ができるのか?
普通、本人の遺族、あるいは相続人が「得べかりし利益」を求償できるのだが、
これは将来賃金から将来の生活出費を引いて、現在価値に割り引いたものを犯人に賠償させるのだ。
さて、自分が天涯孤独の独身貴族ならどうか?
誰も犯人に対しての賠償請求権を持たないことは明らかだが、
このあり方よりも(効率的で)望ましい方法はないのか?
常識では、これは誰も求償できないということになってしまって終わりなのだが、
そうするよりもいい方法が(純粋に経済理論的に)存在する。
将来の、自分の死亡原因となる不法行為への賠償請求権を(逆)保険会社に売って、
その期待的な金額を毎年リバース・プレミアムとして、毎年支払ってもらうのだ。
このとき、僕は不法行為で死なない年の終わりには、保険会社からプレミアムを受け取ることができるが、
死んでしまった場合には、保険会社がその損害賠償請求権を犯人に行使して、資金回収することになる。
これは面白いアイデアだが、当然に聞いたこともない不思議な逆保険商品だ。
もし現実の炭鉱労働者や潜水夫などの危険な職業における、賃金のリスクプレミアムが、
親族のある個人<親族のない個人、ということであれば、
会社がそういった(逆)保険を事実上実行していると言うことになるのだろうが、
そういった話も聞いたことがない。
おそらくリバース・モーゲージと同じでたいした需要がないわりに、リスクが大きい、
また準備された法律制度がない、という程度のことなのだろうか、、、