kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

『自由の倫理学』

 著者は言わずとしれた自然権的無政府リバタリアンのマレー・ロスバードです。最近に森村進氏その他によって訳されたものです。

 この著作から僕はあまりにも多くの影響を受けているので、できるだけ手短にいくつかの論点に絞って記します。その前に、いうまでのなくロスバードはかつていた思想家の中でもっとも反政府的であり、かつanarcho-capitalismが確かに機能するだろうということを説得的に主張した天才であることは当然です。

 まず第1に、文体としてロスバードは理解しやすいと言うことです。他の多くの社会哲学者の著作は読んでいるうちに眠くなってしまうことがほとんどなのですが、ロスバードはあまり哲学的なテクニカリティに深入りせず、我々の政治倫理にとって不可欠の部分について明瞭に論理を提示しているのが印象的です。この点、古典的な社会哲学者はその衒学主義を猛省すべきでしょう。

 二番目はロスバードの自然権論、特に所有権論への絶対的な帰依です。僕はある程度の功利主義者であり、結局は多様な倫理も功利主義の中に包摂されるのではないかと考えていますが、自然権論に基づくリバタリアンはほとんどがそのようには考えません。倫理的に何が「正しく」て何が「間違っている」のか、という主題を強調する その態度は完全には同感しないものの確かに無視し得ないものがあると思います。

 未来の我々の社会が果たして無政府主義を選ぶのか、それとも現行のような政府と市場の同居を選ぶのかはわかりません。しかし僕が願うように、無政府主義が支配的となっていたとするなら、ロスバードの人類への寄与は確かに不朽の価値を持つのではないでしょうか。