こんにちは。
足が痛いので、ウォルター・アイザックソンの「イーロン・マスク」を読んでみました。この上下本は900ページ近くて、読むのにやたらと時間がかかりました。
当然、イーロン・マスクの半生が描かれているのですが、paypalからtesla, spaceX, nuralinkまで、とにかくいろいろな企業を起こしているので、彼の人生は実に波乱に満ちていて、興味深いものです。
しかし個別の内容よりも、むしろイーロン・マスクがいかに「無慈悲に人を解雇するのか」、が一番興味深いと思います。彼はアスペルガー的な人格の持ち主で、相手への共感が乏しいという部分です。これによって、彼はミッションを優先して、人を切るという芸当を常に躊躇なく行ってきて、その結果が無数のイノベーションにつながってきたというもの。
これは難しい!
ジョブスの話もそうだったのですが、経営者の多くがサイコパス的であるという研究報告があります。それはある程度本当でしょう。経営者の能力の大きな部分が「不要な部分を切り捨てて(解雇して)、リストラすること」です。これは日本的なウェットな人間関係だとほとんど不可能な、もっとも困難な作業です。おそらくヨーロッパ、特にアメリカ企業の変化の速さはここに原因があり、それは流動的な労働市場と表裏一体の関係にあります。
さて、これをどう評価するかは、人間関係をどう捉えるか、評価するかに依ります。評価しない人も多いでしょうが、アイザックソンがここで書いているように、マスクやジョブスはそうした性格によって世界を変えてきたが、同時にそれは容赦のない被害者もいたというもの。
とはいえ、戦国時代ならさておき、本当にいやならマスクのもとを離れるだけで良くて、別に殺されるわけでもありません。実際にマスクに嫌気が差して辞めていった人も多いのです。現代社会では、能力があるなら別のところで働けるはずで、それは特にアメリカのような社会では事実です。
どう評価するべきかは、まさに社会主義と資本主義の是非を論じることと同じです。よくよく考えさせられる著作でした。みなさんも時間があれば、秋の夜長の暇つぶしにどうぞ。
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