- 作者: Daniel Kahneman
- 出版社/メーカー: Farrar Straus & Giroux (T)
- 発売日: 2011/10/25
- メディア: ハードカバー
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最近は Daniel Kahneman の Thinking, fast and slow という本を読んでいる。この本は、教科書的にこれまでの意思決定の心理学実験をまとめている。そこはいいのだが、本人があまりに紳士的な人柄であるためだろう、ややパンチがない。
あと僕にとっては、内容があまりに昔から知っていることでもあり、また授業でも教えていることでもあるので、興味深いとは言いがたい。教科書としてはともかく、「予想道理に不合理」のほうが、娯楽として読むには圧倒的に面白いだろう。
今日はひとつ、たまには新古典派の経済学からの、行動経済学(経済心理学)への反論を書いてみたい。
例えば、よく知られた実験では、最初のアンカーとしての提示価格は、プロ・アマを問わず、買い手の提示価格に影響を与える。つまり、確かに、プライミングその他からの経済的な意思決定への影響は実際に大きいのだろう。
だが、現実において、そうした事前に受取る情報は人によって異なっている。系統だったバイアスが入ることは普通の状態ではない。とするなら、集合知の原理が働いて、価格は正当なものになるのではないか?
もちろん、欧州の経済危機やリーマンショックのような世界的な影響を与えるマクロショックもあるが、ほとんどの情報は局在していて、別に大きな経済的な意義を持っているようには思えない。巨大なマクロショックでさえも、歴史的なスパンで見ると、各種の確率的なショックとして扱うことが正当化されるだろう。
というわけで、主流の経済学者が、あまり心理学の知見を重視しないことには十分な理由があるわけだ。こうした意見は、例えば、東大の神取さん(たしか?)なんかがよく書いていたと思うので、気が向いたらまたみなさん読んでみてください。