僕が抽象的な「教育」、特に道徳的な教育の可能性については懐疑的なのは、
特に隠してきていないと思う。
常に感じることなのだが、多くの親や教育者は自分の存在の価値を高めるような、
あるいは自尊心を高めるような、大きな幻想を抱いている。
だがピンカーの本には、有名な心理学者Baumeisterの研究が引用されている。
例えば
http://www.uky.edu/~njdewa2/baumeisteretaljpers06.pdf
彼の長年の実験結果を要約するなら、
「自制心は筋肉と同じで、使えば疲労してしまうが、
鍛えることで、より自制心を高めることができる」
というものになるだろう。
ピンカーはこの実験結果から、我々の教育システムが洗練され、できるかぎり、
問題解決を暴力に訴えないような自制心を涵養するようになってきた、
と主張する。
僕はこれまで、あまりこの Baumeister なんかの実験に注意を払ったことがなくて、
あるいはそういえるのか!? と半信半疑だった。
もしこれが本当なら、
僕のようにまったくわからない学生に対して授業をするというのも、
あるいは彼らの労働者としての「自制心」を高め、
生産性を高めているといえるのかもしれないことは興味深い。
ちょうど Flynn effect が知能を高めているように、
忍耐力も実際に高まっているのかもしれない。
これはそれなりに説得的ではあるが、
僕は完全に確信は持つことはできていない。
今後とも考えていきたい論点だ。
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