What Is Intelligence?: Beyond the Flynn Effect
- 作者: James R. Flynn
- 出版社/メーカー: Cambridge University Press
- 発売日: 2009/03/23
- メディア: ペーパーバック
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知能研究では、フリン効果というのがよく知られている。これは「20世紀全般を通じて、およそ10年に3ポイント=1/5 sd ほど計測されるIQが上昇している」4という不思議な現象を指している。
専門家の間でも、このフリン効果の解釈は様々だ。筆記テストへの慣れでしかない、という人もいるし、あるいは下層の子供の栄養状態や知的刺激が改善されてきたからで、上層では変化がないという人もいる。少なくとも、知能検査を、真の知性の測定、と考えるなら、一貫して知性が上昇しているという事実は信じがたいため、どうやって折り合いをつけるかが問題となる。
これをベースに「IQ検査は無意味だ」と断言するのが旧来のオキラク左翼なのだが、ピンカーはそうは言わない。なぜなら、知能は、確かにどういった職業でも、成功率の予測においてもっともすぐれているからだ。何も実体がないのに、そういった統計が何度も確認されるはずもない。
ピンカーの意見は、これまで誰も考えもしなかったことだ。(少なくとも僕は初見だった。)それは、本当に人々の「抽象的思考」の能力が上昇しているのだ、というものだ。そしてその理由は、フリン効果は、言語や数学の上昇にはあまり見られないが、まさに抽象的思考において最も大きい、というものだ。
ピンカーは多くの例を引いて、いかに旧世代の日本人たちが自分の立場を超えた発想ができなかったかを例証している。これについては、僕も常になぜ昔の世代の人が朝鮮人差別などをしていたのか、本当に不思議だ。僕の家庭で聞いた昔も奇妙に感じたが、旧世代のアジア人への差別的な発想は今となっては、不思議でしかない。
いまではKARAが踊り、韓流ドラマがあふれるているが、昔はそうではなかった。相手の立場に立ってみる、という抽象的な能力が今よりもはるかに低かったため、多くの差別が平然とおこったのだとピンカーは主張する。そして、今の世代は確かにそうした知性においてすぐれている=差別が少ない=マイノリティに寛容なのだと。
僕には今この考えを肯定しようにも、否定しようにも、あまりに持っている情報が少ない。これから、時間をかけて、論文をまた読んでみたいと思っている。
ともかくも、ピンカーはただのオキラクなリベラルではない。知能の実在、その偏在、双子研究、そうした科学研究も理解している。そして、知能が上昇してきたとするなら、遺伝性があるはずだということも。それだけでも、僕は驚くし、敬意を払う。
ともかくも、人間の心理には、いくつかのモードがあって、暴力モードに入ることは、現代社会ではほとんどない。僕は心底数年前に驚いたのは、戦後間もなくの青春映画、「太陽の季節」を見たときだ。なんとまあ、すぐにケンカが始まり、それが肯定的に描かれていることか!!
(ところで、血気盛んな石原慎太郎氏は、なぜ自分の金で尖閣諸島を買わないで、東京都民の金で買おうとするのか?? 僕には都民銀行の失敗に懲りない老人のメンタリティも、それをリーダーシップだと感じる支持者も不思議だ。)
ともかくも、たしかにヨーロッパ諸国では、僕のようなヤセたアジアのサルでも普通に活動ができる。この事実、この衿度の高さこそが、リベラルな民度の意味なのだろう。こうした文化が果たして抽象的な思考能力と、本当に因果的に関連しているのか? を含めて、今後の検証を待ちたい。
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