こんにちは。
今日はブライアン・ヘアによる「人は家畜化して進化した」Survival of the Friendliestを読みました。この本は分かりやすい上に、楽しいという秀逸なもの。
内容は、Richard Wranghamと同じで、「ヒトはボノボと同じように、自己家畜化して集団を大きくすることで大繁栄できた」というもの。ランガムと同じ内容なのは、ヘアのヴァーヴァードでの指導者がランガムだから。「人の自己家畜化の副産物としての超社会化」のアイデアはランガムが、ベリャーエフのキツネの家畜化や、あるいはトマセロとヘアの犬の指図の理解の話を聞いていてひらめいたのだと書いてある。
ヘアは、ハーヴァード以前にエモリー大学のトマセロの研究室で、犬の指差しの理解についても研究しているから、「社会性動物の認知=心の理論」の専門家になったわけだ。2人の知の巨人が先生なのだから、実に分かりやすい。
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ボク的に最も興味深かったのは、自己家畜化の過程でセロトニンが高濃度になるという話。それは動物の警戒心を下げて、人懐っこくする。実際、セロトニンが低い人は不安症やうつになりがちだし、合成麻薬MDMAもセロトニンを高めて気分をよくする(人が好きになりすぎて、セックスに至ることも多い)。さらにダメ押しは人好きであることが多い、遺伝病であるウィリアムズ症候群もセロトニン異常であるという話。つまりボノボは、ウィリアムズ症候群になった陳腐と言っても良いかもしれない。
こうした知見のすべて、神経系と進化、行動変容のあり方が一貫・一致しているからには、そうした過程があったと考えるに十分だ。気が向いた人は、家畜の色が薄くなることが、神経堤の発達とコルチゾールの生産とも関係していることも読んでみて下さい。
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というわけで、本人がトマセロやランガムほど気難しい学者肌ではないからだろう、ひじょうに気さくな人柄が出ており、読みやすくためになる。すばらしい本である。
こういうすべてを統合できるような研究者が、いつか日本にもぜひとも現れてもらいたい。