- 作者: スティーヴンワインバーグ,大栗博司,Steven Weinberg,赤根洋子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2016/05/14
- メディア: 単行本
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ワインバーグの「科学の発見」を読みました.論点は多いのですが,まず今日は,
1.「科学革命を否定するのが,昨今の流行りだが,それはアリストテレス的な自然観(目的論)との暫時的な決別として,それは実際にあった.」
というワインバーグの主張について.
ニュートンの意義は天上界と地上の物理法則の統一的な説明にあったという話は,高校の物理学でも,数学でも,あるいは世界史でも習います.そうした見解は,ニュートン力学による説明可能性の広さによって実感されるはずです.僕は高校時代の地学でケプラーの法則をニュートン力学から導出する教師に出会い,目を丸くしました.そのオドロキは30年以上たった今も,鮮明に覚えています.
社会学者や歴史学者は,何でもポストモダンなどと称して相対化するのが20世紀終わりからの流行りですが,それは単なるマヤカシであり,数学のよく分かっていない頭の悪い人に向けた邪教の布教書です(笑).さすがワインバーグは痛快にもそれを否定しているのが素晴らしいところです.
例えば,ケプラーは正多面体が惑星間距離を決めているのだろうと言うような古代ギリシャ哲学的な発想=数秘術的な仮説を持っていました.しかし,そうした宇宙や世界の構造についての仮説は,別にあっても良さそうです.あるいはもっと深いレベルの法則から導出できる可能性もあっただろうからです.
結論として,自然の法則の是非を人間的な価値基準から判断するではなく,自然をより多く説明できることをもって判断するというのは,確かに世界観の大変革でした.今でも,革命を理解していない人たちは多数いて,「自然は〜〜を好まない」的な古代ギリシアのような発想で,エコロジー運動やホメオパシーを信じているのがフシギです.なるほど彼らは,ガリレオやニュートンからの自然科学の結果も方法にも興味がないのでしょう.
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