kurakenyaのつれづれ日記

ヘタレ リバタリアン 進化心理学 経済学

TypeA さん、すいません。

今日 朝起きてメールをチェックしたら、anacapさんからのメールがついていた。何でもリバタリアンのブログサイトをつくるということで、小生も参加したらどうだ、ということだった。小生は基本的に、原稿依頼その他に対して積極的に行こうと思っているので、週イチくらいで書かせてもらうことになるだろうか。他にもkyuuriさん、Type A さん、Knight Libertyさんなんかも書くのなら面白くなりそうなので、皆さんも期待してください。


ところで、このところ、他のことにかまけていて、Type A さんのページを読んでいなかったが、小生に向けて、フリーバンキングについて書いてみろとの記述があったので、ちょっと思うところを書いてみたい。(以下ややテクニカルですいません。)


小生は遠い昔アメリカにいたとき、確かに大分マクロ経済学を勉強したのだが、最近はほとんどキャッチアップしていない。無論、関心が変わった部分もあるのだけれど、それ以上に、貨幣の利用についてのミクロ理論が(ほとんど)ないことに限界を感じているからだ。


例えば、貨幣数量説の説くように人々が交換動機をもって貨幣を利用するとしてみよう。市中の貨幣量が増加する場合、どのような経路から増加するのか? この答えとして普通は、まず中央銀行市中銀行への貸出を増やし、それが融資量を拡大し、巡りめぐって民間経済活動に使われる、というものになる。


とすると、貨幣量の増加とインフレの発生には、常にラグがあって、そこで得をするのは中央銀行に近い存在、政府やあるいは金融機関であることになるだろう。これはオーストリア学派のミーゼスあたりも説いているし、ロン・ポールなんかも同じことを言っている。同時に、あるいは価格体系の変化にある種の波状ノイズが生じて、ハイエクのいう価格の情報伝達機能が阻害されることにもなろう。


小生はこの考えに基本的には同意しているのだが、現在のマクロ金融理論は動学一般均衡モデル(ヘリコプターで貨幣を空中からばらまくという仮定がとられることが多い)である。一般均衡モデルは、一瞬ごとにワルラスの均衡が成立しているので、途中の過程という概念が入り込む余地がない。つまり、そこには貨幣量が増えていく途中での価格の変化や、人々の行動の変化が明示的には取り込まれていないのだ。だから、ほとんど常識的に言って、債権者が不利になることは間違いないが、その他の誰がインフレのより重大な被害者になるのかは自明ではない。インフレで苦しむ(と考えられることの多い貧困層)への負担がどれだけになり、あるいは政府や金融セクターの負担がどれだけになるのか、という問いにまったく答えることができないというわけなのだ。


これは貨幣市場に限らず、どんな市場メカニズムでも当てはまっている。ミクロの教科書に書いてありがちな、「タトマン・プロセス」なんかの「ありそうな作り話」を読むと、いかに市場メカニズムゲーム理論と接合していないのかがよく分かるだろう。そもそもインフレになるということは、市場メカニズムを通じて、貨幣の相対価格が各種の財に比べて低下するということだ。この過程の記述は、数学的にはあまり簡単ではないようだ。市場ゲームに置いて、誰がまず価格を上げようとするのか(生産者か、小売りか、あるいはオークション参加者か)、それに対して、価格と数量はどう変化するのか、といった変化は、理論もなければ、実証研究も対して存在しない。たしかに貨幣数量説がいうように、貨幣流通量は9ヶ月から2,3年のうちにインフレを引き起こすというのは、「The monetary history of the United States」なんかの時代から示されているけれど、どういった財から値上がりし、そのタイムラグから誰がどの程度の利益を得ているのだろうか? こういった研究はほとんどないように思う。


もちろん、そうに決まっているという決め付けも結構なのだろうが、あまり科学的な精神が満足されないのが難点だ。かと言って、小生が自分でモデルを構築するほどには数学能力がない。というわけで、あまりこのところは、マクロ金融は勉強していないのだ。


小生の見るところでは、金融理論それ自体よりも、現代のICTによって電子マネーの可能性が広がっており、国家的な法定通貨を超えた超マネーなどがグーグル キャピタルなんかによって発行されることが興味深い実験になるのではないかと思う。


フリーバンキングはリーマン・ショックを再発させるというような反市場主義は永遠なのだろうが、グーグルのような民間会社の決済サービスが貨幣のように普及したら、また状況も変わってくるのでないかと思うのだ。そうならないかもしれないけれど、ポイントサービスの増大の極限には、そういったサービスも生まれてくるのではないかと期待している。