kurakenyaのつれづれ日記

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暗号通貨時代の信用創造

最近Facebookによる私的な通貨Libraの発行について、多くの中央銀行や政治家が「待った!」をかけているようだが、しかしこれは単なる時間稼ぎしかならない。

 

crypto-times.jp

 

 

そもそも民間銀行は、預かっている金銭の100倍ほどを貸し出す権利が与えられている(通貨の信用創造)。これはこれまでの銀行の利益の源泉だ。今では当然視されるこの権利も、イングランド銀行から過去2世紀をかけて「法的に」特許された権利になってきたという経緯がある。

 

もしリブラのような通貨が世界のデファクトになると、もちろん銀行による信用創造はできなくなる。もしできるとしても、それは銀行ではなくて発行元のFacebookの権利になるだろう。

 

 

同じ話だが、どの中央銀行も自らの通貨を暗号通貨に置き換えようとはしていない。これは単純な理由があって、民間銀行による信用創造ができなくなってしまうからだ。

 

暗号通貨では、発行量と所在が基本的に一意に決定されてしまう。日銀の発行通貨が暗号通過になってしまうと、民間銀行は基本的に必要なくなってしまうし、もし現在のように紙幣やコインを扱い続けるとしても、信用創造ができなければ、民間銀行の利益の源泉は消滅する。つまり、今のような形での銀行はなくなって、投資業務・融資業務だけになる。(日本の銀行員は、このどちらにも何のノウハウも持っていない。)

 

これまでの世界で銀行が担ってきた決済業務は、近い内にそのすべてがIT会社に移転するだろう。いうまでもなく、圧倒的に強いのはメッセンジャーを持つFacebookとかLINEとか、あるいは小売業であるAmazon。ついで利用頻度の高そうなApple, Googleというところで、つまりGAFAなんだろう。もっとローカルには楽天やJRコインのようなものが日本を中心に地域通貨として流通することがありそうだ。

 

(通貨が私的な発行物になるというのは経済学史において、最も重要な変化であるのに、野口先生以外はその金融革命的な意義に言及すらしていない、オドロキ!! 単にバカなのか、儒学者なのか?? )

 

ちなみにrippleは既存の銀行制度の存続を前提にして、SWIFTのような過去の遺物を代替することで富を生み出そうとするシステムだ。あるいはこうした利益の出し方は、しばらくは残るのかもしれないが、ボクはあまり共感しない。

 

と考えてくると、Libraとかのほうがよっぽど自然であり、Amazoncoinも時間の問題になる。だって既存の銀行システム自体がレガシーであり、国家権力からの特許だけが存在基盤なのだ。もちろん投資銀行というのは残るだろうが、それはずっとパーソナルなものであり、現在のプライベート・バンキングやヘッジファンドに近いはずだ。これまでのように大きな組織が国家権力と結託して存在し続けるような理由は見いだせない。

 

最後に、金融政策の変化について一言。

 

暗号通貨が主流になると、これまでのように中央銀行による恣意的な利下げや通貨発行は許されなくなるから、政策オプションは減少する。これは通常のマクロ経済学の立場からは、良いとも悪いとも考えられる。

 

(ちなみに、もし実物要因によって経済が変動し、通貨量がそれに追随して増減しているとしよう。暗号通貨の時代には多くの通貨が同時的に流通することになるから、一つの通貨の供給量が固定的でも、経済主体は他の無数の通貨を媒介にして契約できる。結局、銀行の信用創造に代わるかたちで、複数通貨が相互に価値の担保となって、自発的な信用の拡大が生まれる可能性がありそうだ。死ぬ前に、ぜひともどういった世界になるのかを見届けたい。)

 

リバタリアンの立場からは、金融政策のオプションが減るのは単純に望ましいことになる。シンガポールや香港を見てもらいたい。彼らには金融政策なんて、利用不可能だったが、今では東京よりも圧倒的に生産性が高い。

 

長期的な生産性の向上=経済成長には、金融政策なんて有害なだけ。そんなものがないほうが、政治家の詭弁は減り、政治家も国民も本当の課題に真面目に対面するしかなくなるのだ。経済の問題を、政治の問題にすり替えるケインズ主義の思考の病から開放されれば、よっぽどマシな政策論争ができるだろう。

 

日銀にしても、後ろ向きの既存の銀行システムの保護じゃなくて、本当のE-japanを目指して、日本円を暗号通貨にすべきなのだ。後ろ向きの業界保護からは何も産まれないが、日本円を暗号通貨にしてAPIを公開したりすれば、もしかして新たな技術革新を組み込んだ決済システムが日本から生まれるかもしれない。それこそが シンガポールに追いつくためのただ一つの道なのに、、、

 

 

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