もう20年以上前になるが、一ヶ月ほどバンコク、それから北京に滞在してていたことがある。街を歩くと、屋台に多くの昆虫が売られていた。今となっては、それを気に留めず、特に食べようとも思わなかったのが残念だ。
さて2013年にWFOのレポートが出てから、世界的に昆虫食への機運が高まってきた。すでにタイでは大規模な産業になってきていて、ヨーロッパやアメリカにも輸出されている。日本よりも東南アジアが良いという頃からすると、やっぱり年間気温が高い国じゃないと、コオロギは効率的には育たないんだろう。
昆虫食には環境主義的な裏付けがある。1キロの牛肉を作るためには餌が10キロ必要だが、これはトリなら2-3キロになる。コオロギなら1.6キロまで低減できる。おまけに脊椎動物なら不可避の糞尿からのメタンガス、温室効果ガスもコオロギの養殖ではほとんど出ない。コオロギはアミノ酸スコアも完全だということからすると、人体にも良いということになる。
ということで、昆虫食はぜひとも日本でも流行ってもらいたいものだ。しかしコオロギバーを調べてみると、ソイジョイの約5倍以上の値段がする。これでは高級食材としては成立しても、肉に代わる庶民の食べ物にはなりそうもない。今 京都のメーカーBugMoのサイトを見ると、人気爆発で売り切れのよう。もっと生産体制が確立しないとダメということのようだ。
ところでピーター・シンガーは、脊椎動物は当然、二枚貝も苦痛を感じる可能性があるということを主張しているし、それでヴェジタリアンなわけである。皆さん ご存知のように、昆虫の苦痛認知については論争が続いていて、興味深い。
そこまではともかく功利主義者の多くも昆虫のほうが牛よりも苦しまないだろうと考えるだろうし、誰にとっても、自分で実行するなら昆虫と牛では殺すことに対する抵抗感がまったく違うだろう。この点は応援したい。
さて最後に、純粋に経済学的に考えてもみる。確かにコオロギやウジ、ゴキブリを食べるほうが脊椎動物よりも望ましいかもしれないが、養殖に必要な草が何でも良いならともかく、ダイズで良いならそっちの方が効率が良いのかもしれない。さらにはアミノ酸の合成技術がもっとリーズナブルなものになればそっちの方が良さそうだ。結局はハーバー・ボッシュ法のようなものが確立すべきということになるのだろう。
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