kurakenyaのつれづれ日記

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「粗食のすすめ」読んでみた

幕内秀夫 「粗食のすすめ」を読んでみた。

著者幕内秀夫氏は「粗食」シリーズですでに有名であり、他にも多くの著書、レシピー集や対談などがある。

内容としては、各地にはその地域に応じた健康食があり、西洋的に肉食と乳製品を優れたものと考えるのは、単なる西洋崇拝であるとする。その証拠に、戦前の日本人の方が、アトピーも少なく、寿命も長いし、体も強い(ように著者には感じられる)という。また、食事は玄米を中心とする方が、精製された白米よりも、繊維質や各種のミネラルが多いため、より健康に良いという。

私のこの著作の評価は、是非交錯してしまう。結局、肉と乳製品によって体格が良くなるのであれば、それはスポーツ選手としては重要な資質であるだろう。仮にある種の怪我のしやすさなどとの間にトレードオフがあっても、やむを得ない部分もあるはずだ。よって、肉や乳製品が体の成長に直接に効果があるハイクオリティタンパクであることは、ある程度疑いないため、少なくとも本書はアスリート向けではないように思われる。

反面、肉や乳製品の発がん性は西洋でも広く知られるようになってきたため、玄米と旬の野菜を食べるのが長寿に望ましいのは間違いない。同様に、精製された小麦粉、砂糖などが急激に血糖値を変えることで、体に負担をかけることも広く知られれている。この意味では粗食は間違いなく、通常人の健康維持には望ましいと言えるだろう。

また幕内氏は病院で栄養指導を行う実践家であることは尊敬できるが、内容があまりにも思い込みで書かれているように感じる。例えば、乳製品が性ホルモン分泌を高め、乳がん前立腺がんを引き起こしがちなことや、動物性脂肪が循環器疾患に引き起こしがちなのは、多くの国際的な文献からあきらかなのに、そういった資料はほとんどない。反面、その土地にはその土地に応じた食事があると言うが、ではアメリカに移民した各種の民族の話はまったく出てこない。つまり、文章の多くが科学的な知識というよりも、反欧米的な思想に基づく単なる民族主義者の思い込みであるように感じられてしまうのだ。


この点を差し引いても、日本語でこういった正論を読めるのは、大変結構なことだ。著者の意見は一般的なヴェジタリアニズムの栄養学の理解ともほとんど同じであり、日本でもこういった意見がもう少し増えるのが望ましいと思う。